1 薬剤の血管外漏出時のケアに関する実態調査 岩手県看護協会主催の研修会に参加した看護職者を対象に、薬剤の血管外漏出時のケアについてアンケート調査を行った。結果、薬剤が血管外に漏出した際、そのケアに統一性はなく、3種類(冷罨法、温罨法、アクリノール湿布)のケアが個々の看護師の判断によってなされていることが明らかとなった。3種類それぞれのケアにおいても、貼用時間や交換の時期、使用する物品等にばらつきがみられた。 また、臨床で使用されている薬剤について、刺激性が高いと認識しているものについて調査した結果、抗がん剤から補液製剤に至るまで、多種多様の薬剤があげられた。 2 薬剤の血管外漏出による皮膚傷害に対するアクリノール湿布の効果に関する実験的研究 1の調査で得られた結果をもとに、薬剤の血管外漏出による皮膚傷害に対する処置として臨床で日常的に行われているアクリノール湿布に着目し、その作用を明らかにすることを目的に実験動物(ラット)を用いた基礎的研究を実施した。起壊死性抗がん剤であるドキソルビシンと、起炎症性薬剤として知られているジアゼパム注射液を使用し、ラット背部皮膚にこれら薬剤を漏出後、アクリノール湿布を施行した。その後、薬剤漏出部の肉眼的観察および組織学的検索を実施した。薬剤漏出部において、組織傷害の程度をアクリノール湿布を貼用した群と貼用しない群で比較検討した結果、アクリノール湿布の効果を示す知見は得られなかった。
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