香りの刺激時間の違いによる生体反応を検討するために、香り提示装置の作成と、複数の客観的指標を連続測定できる測定システムを作成した。 1.香り提示装置の作成:香りの研究では、その研究にあわせた香り提示装置を作成することが重要であり、本研究では精油の香りを一定の感覚強度(流量)で、加湿させて提示することが必要である。そのため、精油を容器内でバブリングさせると同時に、加湿空気と混合し、加湿と一定の感覚強度の調整を行った。また、酸素マスクから香りを吸入させることで、香りの拡散を最低限に抑えることが可能となった。さらに、空気清浄機(本年度購入)を併用することで、室内への香りの吸着を抑えることが出来、環境を一定にして実験が行えた。 2.生理指標測定システムの作成:本年度購入した生体アンプシステム(測定用ノートPC含む)と既存のアンプの組み合わせにより、香り刺激のオンオフ、測定指標(脳波、血圧等)データを同時に取り込むことが可能となった。このことにより、複数の指標を同期させて測定することが出来、実験の精度が向上した。 3.香りの刺激提示時間の検討:これらの香り提示装置と測定システムを使用し、香りの刺激提示時間の検討を行った。精油は、ラベンダーとベルガモットの2種類を使用し、被験者に提示した。刺激提示時間として、10秒間、20秒間、30秒間の3条件を設定し、比較を行った。その結果、香りの種類に関わらず、10秒と20秒では、前頭部の脳波の変化が大きく、三叉神経刺激による反応が大きく出ていることが推察された。30秒間香りを提示した場合では、後半側頭部から後頭部でも変化が認められ、嗅覚刺激による脳活動を反映したと考えられる。このことにより、看護ケアへの活用を考慮した場合、刺激提示時間は30秒以上が適当であると考えられた。
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