わが国の看護学修士課程において、理論と実践を統合させるシステマティックなカリキュラムを構築していくために、今回の研究では、まず現状のカリキュラムを分析し、上級実践看護師教育において先駆的存在である米国のカリキュラムとの比較を通して、理論と実践がどのように統合されたカリキュラムが効果的であるのかについて検討し、今後の課題を得ることを目的とする。 本年度は、看護教育及びカリキュラム開発に関する国内外の文献検索及び検討を行った。 国内の看護学修士課程の教育カリキュラムに関する文献を概観したところ、近年、専門看護師制度も導入され、看護の修士課程及び博士課程も新設が相次いでいるが、わが国における看護学修士課程は、まだ歴史が浅いこともあり、教育カリキュラムについての体系的な研究はほとんどなされておらず、そのためわが国と諸外国のカリキュラムとの比較をした研究もなされていなかった。一方、米国においては、看護の高等教育のなかで、上級実践看護師教育が早くから取り入れられ、専門的知識・技術を兼ね備え、実践能力のある上級実践看護師が、ヘルスケアシステムにおいてその重要な役割・機能を確立している。既に多様なプログラムが存在し、看護学の博士課程も充実しており、カリキュラム開発に関する研究も幅広い側面からの研究なされてきている。 現在、日米の看護学修士課程において、教育カリキュラム・シラバスを収集し、収集したカリキュラム一つ一つについてデータシートを作成している段階である。教育カリキュラムの理念、目的、目標、概念枠組みを明らかにし、学習内容を構造化していき、構成、各科目の位置付け、内容間の関連、履修順序等を明確にする。さらに修士課程で行われている実習についての具体的な方法(時期、開始条件、期間、場所、内容、評価方法)を明らかにし、それを基にカリキュラムにおける理論、実践、及び研究の配分、またそれらがどのように統合されていくのかを出来るだけ具体的に把握するようにしている。 次年度も引き続きデータ収集及び分析を行っていき、上記の国内外の文献検討及び、日本と米国における調査から得られた結果を基に、比較検討を行い、日本の看護学修士課程において理論と実践をどう統合させていくかについて今後の検討課題を提示する予定である。
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