研究概要 |
1年目進捗状況 平成15年度実施計画の重要項目である国内外の関連文献検索・レビュー及び関連学会・研究会への積極的参加を実施・継続中である。特に文献レビューについては、以下の2つの側面で成果が得られた。 (1)本研究の概念的枠組みは、(1)波平(1994,1996);医療と文化の関連性について言及し、日本文化の中において、「生命とは」という問いは社会変化や集団・組織文化と複雑に絡み合っており、時代・世代・地域差があると指摘している。(2)日常的実践の中にある象徴的サインからその集団や文化における事象の意味を見いだそうとするDouglas(1978,1996)の視点を展開させたGoopy(2000)と山口(2002)、(3)人々の健康観や看護ケアへの期待の背景にある社会文化的影響に着目したLeininger(1984,1995)の視点、を起点として構築した。この枠組みによって、現代医療・看護場面における具体的な倫理問題は、その背景を含めて包括的に理解することが可能であり、文化・社会・グループによって問題の捉え方が異なることを幾つかの国を事例として検討している。 (2)倫理的issueの選択については、倫理に関する幾つかの国内外文献・教科書的書物から、議論が盛んであり重要と思われるものを抜粋し、関連項目をA〜Dとグループ化した。その後、キーワード、予定対象国(日・伊・豪)をクロスリファレンス分析(過去5年間分)した結果から、各グループの比較的既存文献が多いと思われるものから選択した。それらは、A.生きる権利と死ぬ権利に関わる「安楽死/尊厳死」、B.命の誕生に関わる「人工妊娠中絶/不妊治療としての人工授精」、C.医療専門職者としての応用倫理「同輩のミス(医療事故)」、D.死の定義を問う「脳死(臓器移植技術と関連した)である。結果は各国の傾向・相違を示す一指標ともなった。例えば、「脳死」に対する日本の反応(文献数)は他の比較国の4〜10倍、「人工授精」では日本・伊は豪の2〜3分の1、「医療事故」に関するものでは、伊は日本と豪の4〜5分の1であったことなどである。 今後は、上記A〜Dに更に焦点あてた各国の文献レビュー及び考察を遂行しつつ、プレテストを早期に実施することとする。
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