本研究の目的は、看護系大学教育カリキュラムで国際看護学および演習について、目的・内容・方法や評価基準、また海外研修を実施・運営するにあたっての問題や課題について、その実態を明らかにする事にある。本年度は全国N系看護大学4校・短期大学3校(計7校)で国際看護学・演習を担当する教員11名を対象にインタビュー調査を行い、学生便覧、授業概要等の資料を収集した。N系看護大学・短期大学の教育理念・目標に「国際的に活躍できる看護師の育成」が掲げられている。 大学4校すべての看護教育カリキュラムの中で、一部必須または選択科目(1-2単位)として国際的な視点から看護・保健を教授する講義(国際看護学・国際保健学)を設置しており、海外看護演習を設置している大学は(4校中3校・2単位)であった。その演習内容は、米国の看護大学と提携し看護専門的講義と保健医療施設の見学を組み合わせた「学習志向型」と、発展途上国の健康問題について体験を通して、国際協力・国際開発を主眼としたプライマリーヘルスケアの活動・見学等の「実践志向型」の2通りがある。 短期大学2校では国際看護学に関する講義は「災害看護学」「赤十字活動論」といった科目に一部組み入れて教授されている。海外演習は、国際交流委員会などが企画する語学研修とホームステイが中心で、その上に研修国(先進国)の保健医療施設の見学・看護講義を組み入れている内容であった。地域看護学専攻科をもつ1短期大学では、赤十字のネットワークを通して発展途上国で行う演習を設置していた。しかし、ほとんどの大学・短期大学で、国際看護演習の海外研修を企画するにあたり、各大学の担当教員が個人的にもつ海外活動のフィールドや人脈から、コストと安全性を苦慮しながら研修先を開発・確保するに頼っている。 演習の運営・維持にあたってテロ事件等のため海外演習の中止に至ったケースや、教授する看護教員の不足、国際看護学の認識も教員によって様々であり、新たな分野であるため系統的に教授するには困難があるが、国際的に活動できる人材の育成に関して、講義・演習の中に各大学の特長を自由に反映させることもできる。次年度はN系以外の看護系大学の国際看護学・海外演習についての取り組みについて調査を行う予定である。
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