本研究目的は、慢性膵炎術後患者の術前から現在までの食生活・飲酒習慣の変化とそれらに関連する身体状況や社会生活の変化、心理社会的背景とその要因について明らかにし、看護支援に資することである。 研究期間内に得られた対象者は全例男性で19例、平均年齢53.8±12.1歳であった。術前の食生活は主に「早食い・過食・脂質の多い食事」といった傾向がみられ、腹痛など症状出現時には油物や食事摂取量を控える、禁酒や節酒といった調整を行っていた。 術後の身体状況は、19例中5割の患者で、食事や飲酒制限に緩みがみられた。食事・飲酒制限に緩みを認めた者の内、7割は術後約半年までに緩みがみられた。その緩みは、「体調の回復感」に基づいた「油物、肉類を食べる試み」という食行動に現れていた。また、食事・飲酒制限の緩みは、「食事・飲酒制限」「食事制限のみ」「飲酒制限のみ」の3パターンと「緩みなし」に分類できた。食事・飲酒制限ともに緩みがみられた患者ではSF-36の結果、「術前の体の痛み」が強く(X^2=8.7、p<0.05)、久里浜式アルコール症スクリーニングテスト(KAST)においても、アルコール依存度が高い(U=4.5、p<0.05)という結果が得られた。次に食事制限の緩みがみられた患者では、調査時点での摂取カロリーが30kcal/kg/day、脂質摂取量は40g/day以上と多い傾向を認めた。 慢性膵炎の原因・術式と食事・飲酒制限の変化に関連はみられなかった。 以上のことから、慢性膵炎術後患者への有効な看護支援には、術後約半年を目処とした栄養士による栄養評価に加え、食事・飲酒制限の緩みに繋がる「体調の回復感」、それに基づく「油物、肉類を食べる試み」の食行動に注目すると同時に、食事・飲酒制限の緩みに関連が認められた背景要因をSF-36などで定量的に評価し、それに基づく療養行動支援の計画が重要であるとの示唆を得た。
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