研究概要 |
昨年度の結果から,身体的活動評価として用いた下肢筋組織厚の総和値は,術後経過が順調な患者に対する身体回復指標として使用できると考えられた.今年度は,回復が順調でない事例に対しても下肢筋組織厚を用いることができるのか,また,より簡便に評価できる部位はどこかについて検討した. 開腹術後の身体回復が遅延する2事例を対象に,患者の身体的な回復過程を評価した.術前から退院までの期間,下肢筋組織厚,エネルギー摂取,行動範囲の3側面について測定した.その結果,下肢筋組織厚は,通常の経過事例との比較では,下肢筋組織厚はよりいっそう低下を示した.この筋組織厚の低下の原因として,術後臥床期間,エネルギー摂取不足や離床後の活動範囲が影響していると考えられた.また,下肢筋組織厚は,術後の身体的回復が遅れている事例に対しても身体回復指標に使用できると考えられた.(Quality Nursing 10(11),頁67〜73,2004.) 次に,より簡便に評価できる評価部位を明らかにするため,下肢4ヵ所の中から,手術や臥床による影響を受けやすい部位について検討を行った.下肢4ヵ所の屈筋・伸筋は,術後にいずれも有意な減少を示したが,その中で一番減少した筋組織厚は大腿直筋であった.また,大腿直筋は,臥床日数の増加に伴いさらなる低下を示した.したがって,下肢4ヵ所の中では,大腿直筋の筋組織厚を評価するのが望ましいと考えられた.(第3回NPO法人日本リハビリテーション看護学術大会,2004年10月発表) 以上より,下肢筋組織厚は,術後回復が遅延している事例に対しても評価することができ,また,下肢4ヵ所の中では,大腿直筋上を評価することが望ましいと考えられた.今後は,大腿直筋上の筋組織厚と心理的回復感の関係について検討していく予定である.
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