研究概要 |
【目的】昨年度に引き続き,人工股関節置換術(THA)を受ける患者の健康関連QOLについて、手術前後で縦断的に評価することである。さらに、和式のライフスタイルとTHA術後患者の身体機能を比較し、関連性を検討した。本研究の特性は日本人THA患者多数例を対象とした初めての前向き研究であること、日本人特有の生活動作やライフスタイルにおけるQOLを検討することである。 【方法】昨年までに85名の調査結果を分析したため,さらに対象者を前向きに拡大調査した。研究参加者は2003年7月から2004年7月までに佐賀大学医学部附属病院で初回THAのため入院した309名を前向き調査の対象とした。上記の期間中に入院した全員に研究参加を依頼した。同意を得られた患者に、入院後の手術3〜4日前、退院後1か月(術後6週前後)、術後6か月に調査を行った。術前調査は自記式調査票を配布し、術後は調査票を郵送した。手術前後に健康関連QOL尺度Western Ontario and McMaster Universities Osteoarthritis Index(WOMAC)とEuroQol 5D、日本人特有のライフスタイル、個人属性などの項目を尋ねた。 【結果】調査依頼を行った309名のうち257名が調査に同意し、52名が拒否した。そのうち、203名が術前と術後2回の調査票を完了した。身体的側面は痛み、こわばり、身体機能の全てにおいて、術前より術後の方が有意に改善し、また退院後1か月より術後6か月の方がよい傾向にあった。また、日本人の生活様式とTHA術後患者の身体機能を比較し、関連性について検討した結果、和式の生活をする日本人のQOL評価には、WOMACによる西洋式の生活評価尺度だけでなく、正座やしゃがむなどの伝統的な生活動作も評価指標に含めることが必要であることが示唆された。
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