研究概要 |
本研究が目指すところは,統合失調症患者に対する一看護介入としての服薬心理教育に関する実践的な看護理論を構築することである. 今年度は,昨年度に開発した統合失調症患者に対する服薬心理教育プログラム(セッションの構造,「患者教育用」と「看護師教育用」の2種類の教育用教材)を用い,精神科急性期治療病棟をフィールドとして本格的に実践しデータを蓄積してきた.データ分析は,Grounded theory approachを参考にして継続的比較分析を行うために,服薬心理教育の実践およびデータ収集と同時に進めてきた. 結果,服薬心理教育を行うことの意味としては,クローズド・グループの中で患者自身が自由に経験している内容を語ることにより,緩やかではあるが好ましい方向へと認識を変更していることが明らかになりつつある.例えば,陽性症状が活発な時期の患者は,「誰かに操作されて死ぬのではないか」「薬漬けにされて暗殺されるのではないか」という被害者意識や,「人と話すのが億劫になって閉じこもってしまう」という社会的相互作用の回避を経験していた.そして,内服治療を受けることによって「記憶力が低下した」「口が思うように動かない」という好まない症状を自覚するが,一方で「会話することが楽しくなった」「自分の状態がわかるようになった」「症状が消失した」という好ましい変化が自覚できるようになり,「病気と長く付き合っていきたい」と認識を改めるようになる.
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