昨年度の調査をもとに、質問紙による実態調査を計画していたが、再度検討し、面接調査結果の分析を主に行った。その理由としては、対象者が全身性エリテマトーデス(以下SLE)女性本人ではなく、その配偶者であることから調査協力を得にくい可能性があること、安易な質問紙調査は避けなければいけないこと、本来の研究の主旨を振り返ったためである。 以前の施設の協力のもとに得られた結果について、分析を再度行った。 SLE女性の配偶者は、「妻の発病に対する驚きと混乱」を体験していた。これは、SLE女性が聞いたこともない病気を発病したことを納得できず戸惑いを感じていることと共通しており、この時期はしばらく続くことがわかった。その後、SLE女性が副腎皮質ステロイド薬による治療が行われ、症状などが改善し以前の身体状態に回復していくにつれて、配偶者自身の体験としては「妻の病状回復に伴う安定」が見られた。 SLE女性も以前の健常時と同じような役割(仕事、家事、育児など)を果たすことが可能になるにつれて、自分自身で回復を実感するようになるが、配偶者もその妻の回復を実際に見ることによって、揺れいていた気持ちが次第に安定していくようになっていた。 その後、時にはSLE女性自身が病気であることを忘れるぐらいに落ち着くようになるが、やはり自己免疫疾患患者が常に将来に対し不確かさを抱えているという指摘と同様に、SLE女性も今後の生活については大きな不確かさを抱えていた。そして、配偶者自身も「先が見えない不確かさと現状維持の希望」を体験していた。 さらに、この長い発病から現在に至るまでのプロセスの中で、配偶者自身は「もしかしたら変わっていたかも知れない人生」という気持ちを体験していた。これは、もし妻が病気でなかったら、結婚前に病気がわかっていたら、自分自身の人生は何らかの形で変わっていたかもしれないという配偶者自身の人生を振り返る体験であった。 以上の分析を行ったが、1対象者に複数回の面接を実施することができなかったため、結果については深く配偶者自身がもつ心の奥底にある感情などをどれぐらい反映しているかは限界があるし、分析法自体もより主観的体験を明らかにする方法論を採用することができなかったため、個人個人のもつ妻の発病の意味については限界があった。今後はさらに、対象者や面接回数を増やすことで、今回の結果の妥当性・信頼性を高めるために研究を継続したいと考えている。
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