本研究では、家族サポートの乏しい胃癌術後患者の食の実態及び取り組みを明らかにすることを目的とした。今回食事提供における道具的サポートが少ないと考えられる事例、つまり自分で調理及び食事の調達を行う患者を対象者にした。研究デザインは、質的帰納的デザインである。入院中及び退院後一ヶ月の時期に食に関する半構成的面接を実施した。対象者は16人であった。患者のサポートをする家族員よって3つの食の取り組みタイプが見られた。食事提供のサポートをする家族員が【娘・嫁タイプ】は退院後一ヶ月後の時点で調理者役割の変更がみられ、患者は新たな調理者を補助する傾向が確認された。【配偶者タイプ】は、一ヶ月後も調理者役割を継続していた。しかし胃切除術による体力の低下や味覚・嗅覚の変化など身体的変化により調理困難な事態が生じ、長時間な調理や食事の買い出しなど患者にとって困難な部分を配偶者に補助してもらう傾向が見られた。【単身タイプ】は、介護保険適応の有無によって違いが見られた。高齢者は介護保険を使用しヘルパー等社会資源の活用が不可欠であった。壮年期は調理や食事調達役割を継続せざるを得ない状況であるが社会資源を活用するという発想はなく市販品などを活用をしていた。以上のことから、医療者が患者に対して食事指導を実施する際、入院時調理役割を担っている患者であっても退院後役割変更する可能性が高いことを意識することが大切である。また、患者に対して誰が主たる食事提供をサポートするのか、医療者はそのタイプに応じた食事指導を援助していく必要がある。
|