本研究は精神科看護における急性状態の臨床判断と看護援助について検討することを目的としている。最近、精神科領域では急性期や保護室内でのケアに関する研究、報告がされるようになった。しかし、精神科看護における看護実践は経験の知から実践の知へと歩みだしたばかりである。特に急性期や入院初期のケアが患者のその後の経過や慢性化に非常に重要な意味を持つことから、本研究の意義は大きいと考える。 本研究の方法は、急性状態にある患者への具体的なケア場面に参加し、場面のやり取りを記述した後に看護者にその場面についてインタビューを行っている。平成15年度は札幌市内の単科の精神科病院施設2ヶ所において調査した。対象患者3名、観察場面6場面、インタビューは4名の看護者に行った。看護者の急性状態の判断は関わる前に得た情報に実際に接して得た情報を加え、さらにかかわりの場面の中で患者の状態像を描いていることがわかった。具体的には1.かかわる前の情報(カルテ、看護記録、他の看護者からの引き継ぎ)、2.かかわりから得た情報(表情、言動、疎通性、全体性、など)、3.かかわったプロセス全体(場面内での患者の変化、別場面との比較)、といったことがあげられた。また、急性期の臨床判断は臨床経験が豊かな看護者ほど患者との直接的な関わりから判断する傾向にあった。看護援助に関しては現在、「試み」、「促し」、「待ち」、「回避」といったKey Wordが抽出されつつある。 次年度は、研究フィールドを1ヶ所増やし、十分なデータ数を確保する予定である。
|