セルフケア能力は、社会文化的な背景や健康状態の考慮が必要とされている概念である。しかし、日本における慢性病者に特有なセルフケア能力の概念は、未だ解明されていない。本研究の目的は、日本における慢性病者に特有なセルフケア能力の構成概念を明らかにすることである。 平成15年度は、日本における慢性病者に特有なセルフケア能力の構成概念を検討するために、著者がこれまでに開発してきた、慢性病者のセルフケア能力を査定する「自己評価指標」と、「他者評価指標」を比較検討することからはじめた。自己評価指標と他者評価指標に含まれていた、日本人に特徴的な他者を活用して健康管理を行う能力としての構成概念<有効な支援の活用能力>は、日本の慢性病者に特有な構成概念と考えられた。また、他者評価指標のみに含まれた構成概念<選択する能力>は、表現を工夫することで自己評価指標にも使用でき、日本の慢性病者に特有なセルフケア能力の構成概念となり得ることが推察された。構成概念<弱みと強みを考慮して生活を調整する能力>は、慢性病をもつという弱みと自らの強みを考慮する能力であり、慢性病者に特有なものであると考えられた。さらに、国内外の文献を検討し、類似概念であるADLとセルフケア能力の違いや類似点、看護理論家たちが説く生活行動援助とセルフケア能力の関連、そして、日本文化や慢性病とセルフケア能力との関連について、明確にした。以上を踏まえ、日本における慢性病者に特有なセルフケア能力の構成概念の原案を作成した。この原案をもとに、日本における慢性病者に特有なセルフケア能力の構成概念を検討するための看護師を対象とする面接調査の準備を行った。平成16年度は、調査を実施した上で結果をまとめ、日本における慢性病者に特有なセルフケア能力の構成概念を明らかにする予定である。
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