本研究は、助産師が提供している乳房ケアの適正コストを導くことを目指している。本年度は、第1段階として、退院後、実際に提供している乳房マッサージや保健指導あるいは、電話相談や電話訪問(以下、退院後の母乳ケアとする)に関する実態調査を行った。 対象は全国の赤十字病院および中四国で診療科として産婦人科を有する施設114施設であり、調査票の配布及び回収は郵送法にて行った。調査内容は、次の通りである。施設の概要として(1)設置主体、(2)病床数、(3)分娩件数、(4)看護職種別による人数等、(5)退院後の母乳ケアを提供しているかどうかについての質問、退院後の母乳ケアを提供している場合は、(1)ケア提供者に関すること、(2)ケア提供時間に関すること、(3)ケア提供する場所、(4)価格等について質問した。 その結果、103施設で何らかの退院後の母乳ケアを提供していた。3分の1の施設では、退院後の母乳ケアを助産師だけでなく、看護師も提供していた。しかし、退院後の母乳ケア提供者が母乳ケアを提供するための十分な教育を受けていない施設が多かった。退院後の母乳ケアが予約制である施設は半数程度で、多くの場合、対象者の来院時にケアが提供できる空間で、そのときに居合わせたスタッフがケアを提供していた。電話相談、電話訪問では、ケアに対して報酬を請求しておらず、乳房マッサージでは80%の施設で再診料あるいは自費による費用を請求していた。自費による費用は1回のケアに対して、1000円から3500円の範囲であった。 以上のことから、退院後の母乳ケアを提供している施設は多くあるが、その質やアメニティが充実しているとはいいがたく、その価格についても施設により異なっていることが明らかになった。 以上の結果を踏まえ、現在、適正価格を算出するための手法としてコンジョイント分析をするための調査表を作成しているところである。今後、作成した調査表を用いて、退院後の母乳ケアを提供している助産師および、ケアを受けている母親を対象に調査をする予定である。
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