研究概要 |
<目的>高齢者施設におけるケアスタッフの夜勤帯の連続する排泄介助に伴う腰部負担を明らかにするため,本年度は実験室において1人で4人連続して行うおむつ交換時の腰部前傾角度と所要時間を測定し,連続回数と腰部負担との関連を検討した. <研究方法> 1.対象:被験者は,研究協力の得られた高齢者のおむつ交換に熟練する看護師2名と介護福祉士2名(女性,年齢31.3±2.6歳,身長163.0±2.Ocm,体重52.1±2.Okg).腰痛歴のある看護師2名のうち1名は腰痛ベルトを使用.高齢者モデルは,研究協力が得られ,寝たきりランクC2(一日中ベッド上で過ごし、自力で寝返りもうたない)を想定した看護学生7名(身長157.0±7.2cm,体重49.1±7.4kg). 2.方法:被験者は,高さ50cmのベッドにおいて,通常用いる作業姿勢で高齢者モデル4人を連続しておむつ交換した.被験者の腰部に光ベルコム製関節角度測定センサー(DIANGLE)を装着して前傾角度を測定し,おむつ交換時の各動作や所要時間はデジタルビデオカメラを用いて撮影した.終了後,被験者に腰痛の有無や程度など主観的な反応を確認した. <結果> 1.4人連続するおむつ交換の所要時間は約9-16分であり,腰痛歴のない2名と腰痛ベルト使用した1名は一人あたりの所要時間が約3分とほぼ変わらないのに対し,腰痛歴のある1名は,1人目は約3分,4人目には4分と回数を重ねるごとに所要時間を多く要した. 2.各動作に伴う平均角度は,腰痛歴のない2名と腰痛ベルト使用した1名は一人あたりのおむつ交換において約10度の幅でゆるやかに変化し,回数を重ねてもほぼ変わらないのに対し,腰痛歴のある1名は約30度の幅で変化し,回数を重ねごとに各動作の平均角度が約5度ずつ減少した.主観的な反応では,2人目までは「腰がだるい感じ」と共通し,3・4人目と人数を重ねるにつれて腰痛歴のある2名に強い腰部負担がみられた. <考察>4人連続するおむつ交換時の前傾角度と所要時間は,腰痛ベルト使用や腰痛歴のない場合と腰痛歴のある場合に違いがみられた.今後はより多様な状況の臨床場面を検討したいと考える.
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