本年度は地域看護診断が行われるプロセスに焦点をあて、地域看護活動実践と地域看護診断のプロセスを分析・検討した。対象は離島であるH地区の保健師2名であり、自らの地域看護実践において、自ら築き上げてきた実践活動のプロセスとそのアセスメントの課程についてインタビューを行い、保健事業を計画するプロセスについて、事業を立ち上げる時の動機やきっかけ、事業を立ち上げるための様々な条件、住民の状況等の必要な情報、その情報を得るための実践活動について語ってもらい、内容を分析した。 その結果、ある一つの保健事業が立ち上がるための必要な情報あるいは条件が要素として抽出されることにより、ある一つの保健事業を立ち上がるためのセスメント・ツールの基本的要素を抽出することが可能であると考えられたが、その一方で、実際の地域看護活動の実践の場においては、保健師は担当地域全体の地域看護診断を行った結果から、保健事業を立ち上げているのではなく、保健師が地域における様々な現象の中から一つの現象に着眼したことがきっかけとなり、そこから必要な情報や条件を活動を通して整備しながら、保健事業への展開へと発展していることが明らかとなった。保健事業は、その保健師の着眼点がなければ、保健事業の立ち上げにはつながらず、地域看護活動におけるアセスメントのプロセスはその保健師の思考過程や哲学あるいは感性が大きく影響を与えており、その専門性あるいは熟練した技と呼ぶべき能力が地域看護診断における一つの要素として重要であることが示唆された。
|