研究概要 |
1.研究の背景と目的 セルフヘルプ・グループ(以下SHGと略す)は近年わが国でも増加しているが、その実態や専門職の支援のあり方については明らかになっていない。わが国の看護職は従来からさまざまな形で当事者グループ(以下当事者Gと略す)と関わっておりその意義や有用性を認めている。特に保健師は当事者Gの支援についての豊富な経験を持っていると思われるが、これまで事例報告が多く研究は不足している。そこで本研究では保健師の当事者Gに対する関わりの実際と当事者Gの有用性に対する認識を明らかにすることを目的に調査を行った。2.研究方法(1)石川県内に勤務する保健師348名全員に対し、当事者Gとの関わり経験の有無や関わりの内容、当事者Gに対する認識などに関する11項目の択一回答式質問と自由回答式質問からなる自記式質問紙を郵送した。(2)倫理的配慮:調査結果は学術的な目的以外では使用しないこと、個人が特定されることはないこと、調査への協力は任意であることを文面で説明した。石川県立看護大学倫理委員会に審査を申請し承認を受けた。(3)用語の定義:当事者Gとは「何らかの疾患や問題を抱えている本人や家族などの当事者同士が気持ちや経験、情報をわかちあうことによって互いに支え合い、主体的に問題解決を目指すグループ(いわゆるSHG、自助グループ、患者会、家族会など)を指し、当事者のみで運営しているグループのみならず専門職や公的機関がサポートするものも含む」とした。3.結果 151名より回答を得た(回収率43.4%)。有効回答を149名とし(有効回答率42.8%)分析対象とした。年齢は23〜59歳で平均年齢は35.9歳(標準偏差8.8歳)であった。現在の職場は県12.8%、市町村85.9%、その他1.3%であった。現在あるいは過去に仕事で当事者Gとの関わり経験のある人は58.4%であった。関わりの内容は「グループの設立支援」「相談・助言」「専門的知識の提供」「場所の確保」「運営・活動支援」などが多く、グループ設立後も保健師が運営や活動をフォローしながら自主的な活動になるよう長期的に支援するケースが多かった。当事者Gに対する専門職の支援のあり方については「設立時のみ支援が必要」と「グループによっては専門職のリーダらシップや継続的な支援が必要」との意見に分かれた。当事者Gをケースに紹介することがある人は62,5%であった。関わりのあるグループと紹介するグループの種類は共通しており、リハビリ、障害児の親、子育て支援等のグループが多かった。もっと県内の当事者Gの情報がほしいという人は87.2%にのぼったが、インターネットでグループを検索する人は24.9%にとどまった。
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