平成15年度は、文献検討とプレセッションを経て、地域の痴呆症リハビリ事業に参加する痴呆症高齢者に回想を導入としたアクティビティケアを実施し、その内容を分析した。具体的な内容は以下の通りである。 【研究対象者】 京都府瑞穂町「軽・中等度痴呆症リハビリ事業」に参加する、76歳〜86歳の女性8名を対象とした。痴呆疾患は、脳血管性痴呆1名、アルツハイマー型痴呆5名、混合型2名であり、MMSEによる認知機能検査では軽度〜中等度の痴呆ステージであったが、いずれの対象者も住み慣れた自宅での生活を継続していた。 【研究方法】 1.上記対象者に、グループ回想法とそこで対象者から出された回想内容を再現するアクティビティを1組として4回分、計8回のアクティビティケアを行った。今回は、データ収集が2月〜3月であったため、この地域の冬季の行事や春への準備をテーマとしたアクティビティケアを実践し、その内容をビデオにて録画・記録した。 2.上記の実践内容を記述データにおこしたものを、質的・帰納法的に分析した。 3.2で得られた結果を平林(2003)の報告内容と比較・検討した結果、セッション時に得られた達成感や満足感が他者へのいたわりに影響を与えること、感情を発露させることが、新たな好奇心を生み、対象者自身がセッションを動かすに至ることを再確認した。しかし、それらの力は、プログラムの継続性ではなく、各セッションごとに生み出され、引き出されたことが考えられた。 4.本セッションに対する対象者の変化としては、精神的な落ち着きや、「また行きたい」という意欲の発現などが見出されたが、疾患や認知レベルとの関連については言及できていない。 【次年度への課題】 次年度は、プログラム内容を一回完結型に修正・実施し、対象者の言動や反応を再分析する。また、家庭での生活状況を聞き取り、地域生活とプログラムの関係性について検討する予定である。
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