本研究は統合失調症で入院中の患者を対象に、多周波数インピーダンス法(BIS法)を用いて体内水分量を測定し、患者と健常者との差異を明らかにし、統合失調症患者をはじめとする精神疾患でよく見られる病的多飲水との関連性から、BIS法の病的多飲水患者の看護への応用の可能性を探った。 本研究において得られた知見は以下のとおりである。 1.統合失調症患者の体内水分量は健常者に比べ有意に少なく、特に細胞内脱水状態にある可能性がある。患者の口渇感は細胞内水分量の減少に伴う生理的な欲求であると考えられる。この体内水分量の特徴は、男性患者、女性患者ともにみられ、性別に関係なく共通の特徴であった。 2.患者群を病的多飲水群(多飲群)と非多飲群とに分け、健常者群と比較した結果、健常者群の体内水分量が最も多く、非多飲群が最も少なかった。細胞外水分量は、多飲群が最も高く、また体内水分量の分布については、非多飲群に比べて、多飲群の方が細胞外水分量、細胞内水分量ともに広い範囲に分散していた。多飲水患者の中で総水分量、細胞外水分量が高値な者、水中毒のエピソードを持つ者は、飲水過多である可能性があり、水中毒発症の危険があることが示唆された。 3.患者における、過剰な飲水は水中毒の危険がある反面、看護者などによる水中毒予防のための過度の飲水制限は患者のストレスになるだけでなく、脱水の危険をも伴うため、患者ケアをする上で注意が必要である。 4.統合失調症患者における体内水分量の評価として、現在一般に用いられている体重の測定値に加えて、BIS法を用いて患者の体内水分量をモニタリングが有用であることが示唆された。
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