本研究の目的は定年退職前後の時期に焦点をあて定年退職前の生活習慣がどのように変化するか縦断的に明らかにすることである。本年度は、平成16年3月に定年退職した58〜60歳の男女176人に対し、定年退職半年後に郵送調査を実施した。回収された110人のうち、定年退職が17年度へ延期になった8人を除く102人を分析対象者した。 定年退職後に引き続いて仕事をしている人は75.5%であった。定年退職後の職業は、専門的・技術的職業34.7%、管理的職業13.9%、事務従事者18.8%の順に多かった。勤務日数平均4.4±1.0日、勤務時間平均7.5±1.6時間であった。治療中の病気ありが42.2%、中でも高血圧34.8%と多かった。 定年退職前後の生活習慣(食生活、運動、喫煙、飲酒、睡眠)、健康度自己評価、健康に気をつけていること、余暇活動の変化は、マクネマー検定、ウィルコクスンの符号検定を用いて分析を行った。定年退職後は定年退職前よりも「健康度自己評価」(P=0.015)は高くなり、「からだをよく動かすこと」(P=0.02)は気をつけるように有意に変化した。また余暇活動は「ごろ寝する」(P=0.05)、「テレビを見る」(P=0.048)が定年退職前よりも有意に多かった。 定年退職を目前に控えた思いは、「どのような生活をしてよいか途方にくれた」「自分の居場所がなくなる」について「全くそう思わなかった」と回答した人が半数以上であった。定年退職後の生活は、「自分の居場所がなくてさびしい思いをしている」「毎日時間を持て余している」について「全くあてはまらない」と回答した人が半数以上であった。今後の心配事は「自分の病気や怪我」(44.1%)、「経済的なこと」(392%)、「配偶者の病気や怪我」(33.3%)の順に多かった。 今後は、定年退職1年後に郵送調査を行い、その変化を縦断的に分析する予定である。
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