本研究の目的は定年退職前後の時期に焦点をあて定年退職前の生活習慣がどのように変化するか縦断的に明らかにすることである。最終年度は定年退職1年半後の2005年9月に郵送調査を実施し、データに不備のあった9人を除く79人を最終の分析対象者とした。分析方法は定年退職前、半年後、1年半後の各時期について調査項目ごとに単純集計を行い、さらに3時点の変化をみるためにFriedman検定を行った。 分析結果は以下のとおりである。対象者は男性89.9%、平均年齢は61.3(±0.7)歳、定年退職後に引き続いて仕事をしている人は定年退職半年後81.0%、1年半後79.7%だった。職業は全体で40%以上が専門的・技術的職業だった。さらに定年退職後は8割以上が配偶者と同居しており、3割が子どもと同居していた。 3時点の変化に有意差がみられた調査項目について、健康度自己評価は定年退職前よりも半年後、1年半後に「非常に健康である」と変化した(p=0.020)。健康に気をつけていることは「ストレスをためない」が定年退職前よりも半年後に増加し、1年半後には低下した(p=0.032)。食事摂取状況は「牛乳・乳製品」の摂取が定年退職前と比べると、定年退職後は「毎日食べる」ように変化した(p=0.006)。また食事で心がけていることは、「よく噛んで食べる」が定年退職前「あまり心がけていない」が多かったが、半年後、1年半後にかけて「いつも心がけている」に変化した(p=0.011)。「ゆっくり時間をかけて食べる」は、定年退職後は「まったく心がけていない」が少なくなった(p=0.014)。普段の活動量は、定年退職前は「ほとんど座っていることが多くあまり歩かない人」が多かったが、半年後、1年半後は「ほとんど立っており、かなり歩きまわる」と変化した(p=0.00)。飲酒状況は定年退職前と比べると、半年後、1年半後は「飲む」人が少なくなった(p=0.032)。睡眠状況は定年退職前、半年後は「6時間未満7時間以下」が最も多かったが、定年退職半年後は「7時間未満8時間以下」へ変化した。目覚めの状況は、定年退職前は「週3〜4日は気持ちよく目覚める」が多かったが、1年半後にかけて「毎日気持ちよく目覚める」へ変化した(p=0.022)。余暇活動は、「TVを見る」が定年退職前から半年後にかけて少なくなり1年半後に増加した(p=0.000)。「町内会やボランティア活動をする」は定年退職前より半年後、1年半後にかけて増加した(p=0.028)。 なお、運動習慣、喫煙状況については、定年退職前後で有意に変化はみられなかった。
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