魏晋南北朝隋唐期の中国王朝の内外観に関する研究を発展させるとともに、東アジア政治システムに関する考察を展開した。その成果のひとつとして、渤海国は唐の開国爵号を援用したものの、自身の政権の特性を考慮した制度運用を行っていたことを明らかにし、南開大学で行われた国際学会において口頭で報告したうえで、さらに論文の形にまとめ、『唐代史研究』誌上にて公表した。また、6月に山西省において行った北魏文成帝南巡碑の実見調査を生かして、南巡碑と北魏前期の天下秩序との関係を論じた口頭報告を行ったほか、学術論文を『中国出土資料研究』誌に投稿した(掲載決定)。その中では、調査結果を踏まえた釈文の訂正も行っている。これ以外に、県侯を中心として、東晋南朝期における爵位システムの混乱と梁陳期におけるその再編について検討し、それが隋唐時代の東アジア官僚制に及ぼした影響について予備的な研究も行った。 こうした学術論文・学会報告のみならず、厦門大学・南開大学では学術講演を行い、また5月に首都師範大学で開催された「綜合的六朝史研究」学術研討会では、本研究課題で得られた成果をも取り込んだコメントを披露するなど、幅広い手段で成果を発信することができた。
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