高効率太陽光水分解系の水の光酸化アノードとして、Fe2O3、WO3などの可視域n-型半導体電極に高い関心が寄せられている。高い表面積を有する結晶性メソポーラス金属酸化物半導体電極は、通常の金属酸化物半導体電極よりも高い光アノード特性が期待される。しかし、多くの金属酸化物で高温での結晶化の際にメソポーラス構造が崩壊してしまうため、結晶性メソポーラス金属酸化物の合成は困難である。本研究では、親水性芳香族部位を有する界面活性剤テンプレートを利用した独自の手法を用いて小細孔を有する結晶性メソポーラス金属酸化物半導体光触媒の合成に挑戦すると共に、その細孔構造制御を目指して研究を行った。TEM測定より、作製したWO3/PAL2-16表面には直径約3 nmの細孔が規則正しく形成されているのが確認された。窒素下で焼結(450 ºCまたは550 ºC)した後、酸素雰囲気下に変更して焼結を続けると、WO3が結晶化するため規則的な構造がやや壊れる傾向を示すものの、メソポーラス構造が保持されることが分かった。空気下で作製したWO3サンプルでは、メソポーラス構造が保持されなかったことより、窒素/酸素の雰囲気変更が重要であることが示された。窒素下で焼結することによりPAL2-16キレート剤が炭化され、これがメソポーラス構造の支柱となるため、結晶性メソポーラス構造が保持されたと考えられる。WO3/PAL2-16電極を用いた光触媒反応では、バルクのWO3電極と比較して、電荷量が6.6倍向上し、酸素発生量も12倍に向上した。このように、結晶性メソポーラスWO3電極が高い光電気触媒活性を示すことを明らかにした。
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