研究課題/領域番号 |
15F15009
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研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
深尾 京司 一橋大学, 経済研究所, 教授 (30173305)
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研究分担者 |
DESEATNICOV IVAN 一橋大学, 経済研究所, 外国人特別研究員
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研究期間 (年度) |
2015-04-24 – 2017-03-31
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キーワード | グローバル・バリュー・チェーン / 国際分業 / 貿易政策 |
研究実績の概要 |
日本及び海外諸国の貿易に体化された職種別とタスク別労働投入のデータベースを整備するため、日本の人口センサス、JIP(日本産業生産性)データベース、(子会社による海外での生産活動や輸出に関する)日本の企業ミクロデータ、フローニンゲン大学のWIOD(世界投入産出データベース)等を用いた作業を進めた。これらの作業結果は、2015年10月にパリのOECDにおいて開催された国際産業連関表に関する国際会議に於いて深尾が報告した。 また、グローバル・バリュー・チェーンの深化によって、貿易に体化されたタスクの内容が、どのように国内における産業別職種別・タスク別労働投入や高・中・低熟練労働者の賃金格差に影響を与えているかについて、第74回日本国際経済学会全国大会において報告した。 さらに、2015年9月に中国・北京に於いて開催された国際コンファレンスにおいて、日本と中国の国際比較に関する報告をした。この論文はApplied Economicsに掲載された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
第一に、日本に関するグローバル・バリュー・チェーン深化を新たに分析するための核となる、輸出企業と非輸出企業別の教育水準別/就業上の地位別労働投入と中間財・サービス投入の構造に関するデータベースは、賃金センサスと工業統計のミクロデータをマッチングさせることにより、成功裏に作成できた。この結果をOECDで報告したが、海外で先端研究を行っている研究者たちにも好評であった。更にこのデータに基づいて、海外の需要が日本で生み出している労働需要や財・サービス需要を計算してみたところ、その結果は、輸出企業と非輸出企業の違いを無視した既存のOECDのデータベース(TiVA)による分析結果とは大きく異なることがわかった。 この他、中国の多国籍企業に関する研究成果を国際学術誌に掲載することができた。また、現在、政府統計ミクロデータを用いて日系多国籍企業の海外進出と撤退に関する研究を東京大学のKonstantin Kucheryavyy研究員と共同で進めているが、この研究からも興味深い結果が得られそうである。
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今後の研究の推進方策 |
2015年度に作成したデータベースを用い、Grossman and Rossi-Hansberg (AER, 2009)が提案した、仕事の貿易(“trade in tasks”)の視点から、国際分業が日本の労働市場に与えた影響について分析を行う。分析にあたっては、フローニンゲン大学、OECD、ハーバード大学のジョルゲンソン教授、等とも連携し、国際比較研究にも注力する。また、多国籍企業の活動に関する産業レベルデータと国際産業連関表の接合や、賃金センサスや工業統計調査のミクロデータを利用することにより、輸出や直接投資をしている企業とそうでない企業の間で、投入する労働の属性や、原材料調達先や生産物販売先がどのように異なるかも、分析することを検討する。またサービス貿易を通じたサービス産業の国際分業についても調べる。
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