研究実績の概要 |
特別研究員として在任中、多くの試料についてその圧力効果の研究を行った。 (1)KFe2As2は、約15GPa以上で出現する圧力誘起正方晶相において、10K以上の高い超伝導転移温度を示すと報告されていたが、その真偽が疑われていた。本研究では、良質単結晶を用いた17GPaまでの圧力下において静水圧性を考慮した研究を行った。常圧における3K付近の超伝導転移温度は10GPaで消失した。さらに14GPa以上で出現した圧力誘起正方晶相でも、超伝導が出現しなかった。このことは、一次転移(構造相転移等)を伴なう高圧下の物性研究には静水圧環境が不可欠であり測定環境に十分配慮しなければならない事を示唆している。 (2)電荷秩序と超伝導の競合の研究を行う目的で、1T-TaX2(x=Se,S)の圧力効果の研究を行った。1T-TaS2は、常圧下でCDWとモット絶縁体が競合する物質であるが、圧力下で超伝導が出現する事が報告されている。本研究では、1T-TaS2、1T-TaSSe、1T-TaS0.8Se1.2、1T-TaSe2の圧力下電気抵抗測定を行い、全ての試料で圧力誘起超伝導が出現する事を明らかにし、その圧力相図を完成させた。 (3)層状化合物(Eu3-nSrn)Bi2S4F4(n=1,2)はBiS2相がその超伝導の起源として報告されている。Euの価数揺動と超伝導の関係を明らかにする目的で、圧力効果の研究を行った。その結果、Euの価数転移と超伝導の出現はあまり関係が無い事を明らかにした。その他、高温超伝導物質、KCa2Fe4As4F2、SrxBi2Se3、他、電荷秩序化合物TaTe2、他、等の物質の研究を行いその圧力相図を明らかにした。
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