研究課題/領域番号 |
15F15026
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
竹内 繁樹 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (80321959)
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研究分担者 |
SCHELL ANDREAS 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 外国人特別研究員
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研究期間 (年度) |
2015-04-24 – 2017-03-31
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キーワード | ナノフォトニクス / 光子 / 単一発光体 / 光ファイバ / 光子源 |
研究実績の概要 |
Schell氏は、原子間力顕微鏡(AFM)と、共焦点顕微鏡を融合させた独自のナノマニピュレーション装置を開発、これまでに量子ドットや窒素欠陥中心内包ナノダイヤモンドなどの、数十ナノメートルの大きさの発光体を、ナノメートルオーダーの精度で精密に共振器に結合させることに成功してきた。一方、我々は、1μm立方程度という極小のモード体積を持ちながら、従来の固体微小共振器では困難であった「単一モード光ファイバとの高効率結合」を実現するデバイスである、「共振器内蔵ナノ光ファイバ」を提案、実現している。本共同研究では、単一発光体とナノフォトニクスを組み合わせた新規光量子情報デバイスの実現を、Schell氏の開発した独自のナノマニピュレーション技術と我々が最近実現した共振器内蔵ナノ光ファイバとを融合させることにより、実現を目指している。 今年度、ナノ光ファイバ中に収束イオンビームを用いて微小共振器を形成した「ナノファイバブラッグキャビティ(NFBC)」に量子ドットを結合させたハイブリッドデバイスを実現した。また、その共振器量子電磁気学的効果(パーセル効果)によって、2.7倍の発光強度増強の観測にも成功した(Scientific Report 2015)。その他、Heイオン集束イオンビームを用いた共振器内蔵光ファイバの試作に成功するとともに、原子間力顕微鏡と共焦点顕微鏡を組み合わせたナノマニピュレーション装置の設計等を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度は、「ナノファイバブラッグ共振器の作成」、「単一発光体との結合方法の確立」などについて、研究実施した。まず、「ナノファイバブラッグ共振器の作成」に関しては、大阪大学産業科学研究所のご協力のもと、Schell氏ならびに我々の研究室の高島助教、大学院生らは、ナノ光ファイバの作成および集束イオンビームの作成に必要となる、さまざまな条件・パラメータの最適化を進めた。特に、共振器の性能指数であるQ値向上を目指し、これまでのGaイオンを用いた集束イオンビームに加え、新しく導入されたHeイオンを用いた加工にも取り組み、良好な初期結果を得た。また、「単一発光体との結合方法の確立」に関しては、共焦点顕微鏡と、原子間力顕微鏡を組み合わせた、ナノマニピュレーション装置の開発に向け、原子間力顕微鏡を選定、購入した。これらの他、ナノ光ファイバ結合デバイスで問題となっている、光ファイバからの背景発光に関して、大阪大学の協力を得つつ、解決方法を検討した。 そのほかに、Schell氏は沖縄科学技術大学院大学(OIST)でセミナーを実施、交流を行うとともに、北海道大学、大阪大学をはじめ、積極的に国内研究グループを訪問した。また、OIST、北海道大学で開催された国際会議や、韓国釜山で開催された国際会議(CLEO-PR)に参加、発表するなど、日本をはじめとする東アジアの研究者との交流も深めた。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度は、前年度に引き続き、「ナノファイバブラッグ共振器の作成」、「単一発光体との結合方法の確立」、「適切な単一量子光源の選択」の項目について研究を進めると共に、「結合量子系の計測」を実施する。「ナノファイバブラッグ共振器の作成」に関しては、平成27年度の試作の成功を受け、Heイオンなどを用いたより精密な作成方法の研究を進め、Q値の向上ならびに、単一発光体からの光子を、より高効率で光ファイバに結合させることを目指す。「単一発光体との結合方法の確立」に関しては、前年度に設計が完了、納品された原子間力顕微鏡を用いて、ナノマニピュレーション装置の構築に取り組む。具体的には、原子間力顕微鏡に適した自作共焦点顕微鏡系を構築する予定である。また、構築したマニピュレーション装置を利用して、単一量子光源と、ナノファイバブラッグ共振器とのより精密な結合に取り組む予定である。「適切な単一量子光源の選択」に関しては、ダイヤモンド中窒素中心や半導体量子ドットに加えて、他の単一発光体についても評価、検討を行う。これらの他に、研究の過程で発案した、単一発光体の2光子励起の実験などにも取り組む予定である。 また、平成28年度も、引き続き積極的に国内研究グループとの交流を進めると共に、国内外で開催される学会への参加、発表を行う。
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