東南アジア域は、台風やモンスーンによる影響を受けやすく、地球温暖化に対して最も脆弱な地域であると思われる。この地域では、地球温暖化による将来予測には主に全球モデル(GCM)を用いて行われているが、正確な温暖化による影響評価を行い、適応策を立てるためにはGCMは十分な解像度であるとは言えない。そこで、本研究では全球モデルの計算結果を地域気候モデルによって力学的にダウンスケーリングを行い、東南アジア域における地球温暖化による将来気候変化の詳細な予測を行った。 前年度に行った、水平分解能60kmの全球モデルを用いた地球温暖化による将来気候変化予測実験の結果を、気象研究所非静力学地域気候モデル(NHRCM)により東南アジア域において、水平分解能25kmまでダウンスケールした実験結果を詳しく解析し、その結果をスウェーデンのストックホルムで開催されたCORDEXのワークショップ、日本気象学会2016年秋季大会及びベトナムハノイで開催されたCORDEX-SEA(東南アジア)ワークショップで発表を行った。 さらに高解像度(5km)のNHRCMによる温暖化気候変化予測実験を行い、フィリピン域の複雑な地形に影響を受ける小さなスケールの気候現象の将来変化予測を行った。また、将来気候変化予測の不確実性の幅を見積もるため、複数の温室効果ガスの代表的濃度経路(RCP)シナリオによる温暖化予測実験を行った。それらの結果は、影響評価研究グループが使いやすいように、目的に応じたバイアス補正を行い温暖化による気候変動予測データとして付加価値の高いデータを作成した。そして、これまでの研究結果をまとめ、日本気象学会誌SOLAへ投稿を行った。これらの計算結果はハードディスクに保存し、外国人特別研究員の出身組織であるフィリピンのマニラ大学マニラ観測所に送られ、さらに詳しい解析を行っている。
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