研究実績の概要 |
ベンガル湾とアンダマン海の堆積物中の有機物の分布,起源,酸化還元の変動は,生物地球化学サイクルを理解する上で非常に重要である.そこで,全有機炭素 (TOC),全窒素 (TN),n-アルカンの濃度を分析した.TOCは,それぞれの海域ごとに0.34-0.79 wt.%と0.61-1.18 wt.%,同様にTNの含有量は,0.05-0.14 wt.% と0.07-0.17 wt.%であった.粘土に富む堆積物は高いTOCを示した.水利学的な分別によりTOCが変化することがわかった.C/N比は,それぞれの海域で5.31-8.52 と5.51-11.92で,海洋プランクトン起源の有機物を主とし,相当量の陸起源の有機物が混在していることが示された. ベンガル湾とアンダマン海におけるn-Alkaneの分布は,それぞれ,主にC19~C35,C17~C35のn-Alkaneで特徴づけられることがわかった.試料中にC23とC25のn-alkanesが比較的高い含有量で含まれており,水生大型植物由来の有機物の寄与が示唆された.一方, C22 とC24 n-alkanesも相対量存在したので,維管束植物由来の有機物の寄与も示唆された.ほとんどの試料において,C29 とC31の高いピークを伴い,C27~ C33の奇数番数の長鎖のn-alkanesより,陸起源の有機物の寄与が示された(例,灌木,木質,草木).上記の結果は,平均的な鎖の長さ(ACL), carbon preference index (CPI), Paq and Pwax 比においても確認された. 柱状コアの下部試料でACL値は高くPaq値は低かった.これらのパラメータは次第にコア上方に向い変化した.時系列な変化については,コア下部の時代には寒冷・乾燥した気候が卓越していたが,次第に,温暖・湿潤な気候状態に変化していったことが示唆された.
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今後の研究の推進方策 |
堆積物について,有機物起源・海底の酸化還元強度・石油天然ガスポテンシャルの時代変化(有機地球化学)を解析する.具体的な手法はXRF分析による主要無機元素濃度と微量元素濃度,ICP-MS分析によるレアアース元素比(Eu/Eu*, LaN/SmN, GdN/YbN比な ど),軽元素濃度分析(水素・炭素・窒素・イオウ),Rock-Eval分析(総炭化水素量,有機熟成度),GC-MS分析による炭化水素濃度 (n-アルカン,芳香族炭化水素,バイオマーカー)である.以上の全ての分析結果を総合して解析し,前年までの成果も踏まえ,海底でのメタンハイドレートなどの形成と資源の活用について解析する.
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