研究課題/領域番号 |
15F15051
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研究機関 | 中部大学 |
研究代表者 |
二宮 善彦 中部大学, 工学部, 教授 (10164633)
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研究分担者 |
JIAO FACUN 中部大学, 工学部, 外国人特別研究員
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研究期間 (年度) |
2015-04-24 – 2017-03-31
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キーワード | セシウム / 塩化揮発法 / XAFS / 塩化カルシウム |
研究実績の概要 |
2011年3月11日に発生した東日本大震災に伴う原子力発電所の事故によって放射性物質が流出し、放射能による環境への影響が長時間持続されている。このうち除染廃棄物に含まれる放射性セシウムは、焼却炉内で800℃以上の高温燃焼条件で大部分が揮発して排ガスへ移動し、残りの放射性セシウムは、ごみの燃え残り(主灰)に固溶する。主灰に固溶した放射性セシウムはアルミナシリケートと結合し、難溶性のためその分離・除去は容易ではない。本研究の目的は、主灰に含まれるセシウムを塩化揮発法により、1/100以下に減らすための最適条件と同族金属(Na, K)の影響について、学術的観点から明らかにすることにある。 本年度は、灰中のSiO2とアルカリ金属類との結合に及ぼす塩素源の影響を検討するため、CaOおよびFe2O3含有率の低い焼却灰を選択した。灰中の非放射性セシウムは29ppbであった。XAFS測定用の試料については、そのままではCs濃度が低いためCsを添加した試料灰(Cs;1wt%)を作成して実験に供した。揮発実験においては、焼却灰および試料灰に塩素源として一定量のCaCl2を混ぜ合わせ、環状電気炉内で空気を通気させ、700~1500℃の所定温度まで昇温し30分間保持した。処理後の試料の元素存在量を原子吸光およびICP-msで測定、固体中のセシウムとカルシウムの吸収端XAFS分析を行った。 塩化揮発実験から灰中に結合したセシウムは、約800℃から塩化揮発し、1200℃以上で95~99%以上を揮発させることができた。カルシウムのK吸収端、セシウムのLII吸収端XAFS測定をした。試料灰の塩化揮発により、添加したCaCl2はアルミノシリケート構造に変化、CsはCsClではない水溶性の何らかの中間状態を形成後に揮発する可能性が示唆された。なお、揮発されずに残存Csは熱処理前と同じ状態にあると推定された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
焼却灰に30%wtのCaCl2を添加して得られた各元素の揮発率を測定し、セシウムの揮発割合は、1300℃=1500℃>>1400℃となり温度と揮発割合に正の相関は見られなかったが、1200℃以上で95~99%以上を揮発させることができた。加熱後の焼却灰は1300℃では焼結状態、1400℃と1500℃では溶融した状態であり、試料の溶融状態と揮発率との間に関係あることが推察され、次年度に詳細に検討する。あいちシンクロトロン光センターで、各種条件の試料のカルシウムのK吸収端、セシウムのLII吸収端XAFS測定を行った。試料灰の塩化揮発により、添加したCaCl2はアルミノシリケート構造に変化、CsはCsClではない水溶性の何らかの中間状態を形成後に揮発する可能性が示唆された。なお、揮発されずに残存Csは熱処理前と同じ状態にあることを明らかにした。
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今後の研究の推進方策 |
セシウムの塩化揮発による大量処理を行うには、微粉砕した主灰を直接溶融バーナーに供給し、数百μm以下の微粒子を高温酸素火炎中で加熱溶融・塩化揮発させてセシウムを気相に輝散させる方法が実用的であると考え、本年度は直接溶融バーナーによる試験を主として行う。メタン/酸素火炎中に数百μm以下に粉砕した灰を同伴させ、HClにより火炎内で灰中に含まれるセシウムを塩化揮発させるとともに粉体を溶融スラグ化する。既存の燃焼試験装置を改造し実験に使用する。主灰からのセシウムの塩化揮発に及ぼす火炎温度およびHCl濃度の影響を明らかにする。また、高温融体に炭素粉末を加えて、混合粉成形体の急速加熱により、鉄-炭素系融体を発泡させて融液相に存在するセシウムの揮発塩素化の促進効果についても検討する。これらの成果はスラグなどの融体化学に関する国際会議(9月頃、プラハ(チェコ))で研究成果を発表し、専門家と研究交流を行う。
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