研究実績の概要 |
2011年3月11日に発生した東日本大震災に伴う原子力発電所の事故によって、セシウム ( Cs ) などの放射性物質が流出し、特に放射性セシウム( Cs-134 およびCs-137 )は発生する放射性元素のなかで揮発性が高いため、その流出量が多くなっている。このうちCs-137 は、半減期が約30 年であるため、放射能による環境への影響は長時間持続される。瓦礫や草木に付着および吸収された放射性セシウムは、焼却による減容化処理が実施されている。ごみと一緒に焼却炉に入った放射性セシウムは、800℃以上の高温燃焼条件で、一部は揮発もしくは液滴となって排ガスへ移動し、残りの放射性セシウムは、ごみの燃え残り(主灰)に固溶する。このうち、主灰に固溶した放射性セシウムは主にアルミナシリケートと結合し、難溶性のためその除染は簡単ではない。 そこで、本研究では、高温下でのアルミナシリケートに固溶するアルカリ金属類(Na, K, Cs)の塩化揮発反応の測定を行い、セシウムの揮発速度に及ぼす競合元素や促進元素の影響を反応工学的観点から明らかにすることを目的に共同で研究を実施した。具体的な成果として (1)実験には放射性セシウムを含まない焼却灰および焼却灰にセシウム添加して模擬灰を作製して実験を行った。この結果、焼却灰に30%wtのCaCl2を添加した場合、1200℃以上の温度でセシウムの揮発率が90%以上を超えることを確かめ、Cs>K>Naの順に揮発しやすいことがわかった。 (2)また、反応中間体として700~1100℃の温度範囲でCsCaCl3生成をX線回折装置にて検出。また、焼却灰に添加する塩化物としてCaCl2以外にMgCl2の効果についても評価した。
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