可燃性の粉体(可燃性粉じん)には粉じん爆発を起こす危険があるが、特にナノサイズ粉じんのように粒子サイズが微小化し表面積が増大した場合の粉じん爆発のリスクは大きいため、適切な粉じん爆発対策は産業等の安全上の重要な課題となっている。これまでは、実測による粉体の危険性評価が主な対策としておこなわれており、粉じん爆発現象(火炎伝ぱ現象)自体の科学的解明は不足していた。そこで本研究では、系統的な条件変化の実験や高速度カメラによる現象の詳細解析を実施することにより、粉じん爆発時の火炎伝ぱ機構を詳細に解明し、粉体の微小化の影響を予測する科学的バックグランドを整備することを目指して検討をおこなった。 平成29年度は、これまでにセットアップした実験装置を用いて種々の粉じんを用いた系統的な粉じん爆発実験をおこない、特に爆発時の火炎伝ぱ現象を高速度カメラで記録し解析した。PMMA粒子を中心に実験をおこなった。以下の結果を得た。 ・火炎伝ぱ挙動の把握:ミクロンサイズ粒子の粉じん爆発では、火炎が不連続で不規則な形状をしており、伝ぱ速度も時間と共に増大するが、ナノサイズ粒子では伝ぱ火炎がスムースで連続的な形状をしており、伝ぱ速度もほぼ一定であることを明らかになった。 ・粒径分布の影響の解明:種々のサイズの粒子を混合して火炎伝ぱ挙動を観察した結果、ザウター平均径が同一でも粒径分布が異なると火炎伝ぱ挙動が異なることが確認できた。 ・火炎伝ぱ機構の考察:火炎伝ぱ挙動を、"熱分解に要する時間"を"燃焼反応に要する時間"で除したダムケラー数Daで整理することができることを見いだした。 以上、粉じん爆発の挙動の科学的解明に資する成果を、中国の研究者であるGao氏と共同で達成することができた。研究成果については、共同で学会誌や発表会等で報告している。
|