研究課題/領域番号 |
15F15058
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
池田 茂 大阪大学, 太陽エネルギー化学研究センター, 准教授 (40312417)
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研究分担者 |
JIANG FENG 大阪大学, 太陽エネルギー化学研究センター, 外国人特別研究員
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研究期間 (年度) |
2015-04-24 – 2017-03-31
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キーワード | 薄膜太陽電池 / レアメタルフリー / 相分離構造 / 量子効果 |
研究実績の概要 |
太陽電池の超低コスト化・超高効率創エネルギーを実現するには、簡便なプロセスを用いて、既存技術による性能を大きく凌駕する革新的技術を開発することが不可欠である。また、太陽電池を構成する元素資源も地殻中に豊富に存在するもの(バルクメタル)を利用することが求められる。本研究では、電気めっきやスプレー製膜などの非真空ケミカルプロセスによる化合物薄膜太陽電池の作製技術を用いて、水と油のように混じり合わない複数の化合物や物質を混合することで生じるスピノーダル・ナノ分解による次元性制御を積極的に利用した①電子と正孔のナノスケールでの高速分離が可能なタイプⅡの半導体ナノ構造および、②通常は透過して損失してしまう近赤外光を2光子励起により有効に利用する浮遊バンド構造を、レアメタルフリー化合物薄膜系太陽電池であるCu2ZnSn(S,Se)4(CZTS)で創成して、「作れる、使える量子効果超高効率太陽電池」を実現することを目的とする。 27年度は母体相の一つであるCu2ZnSnS4の電気めっき(金属積層膜めっき+硫化)及びスプレー製膜の2つのプロセスについて合成条件検討を行った。前者の電気めっきをベースとするプロセスでは、金属積層膜の硫化前アニーリングにより結晶グレインの成長と薄膜表面の平滑化を実現した。後者のスプレー製膜プロセスでは、液相原料の組成比最適化によりキャリア濃度が効果的に制御できることを見出した。実際にデバイス化して特性を評価したところ、いずれ手法で得られた太陽電池も既存のCu2ZnSnS4の中では極めて高い変換効率(8%以上)が達成された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究開始当初は、電気めっきプロセスにより得られるCu2ZnSnS4薄膜が比較的高い太陽光変換効率を示しており、スプレー成膜はそれには全く及ばなかった。そのため、めっきプロセスを中心に研究を開始したが、ナノスケールの偏在構造などを得るには、めっきプロセスには限度があった。27年度に得られたスプレー成膜の成果は、組成比制御が極めて簡単にできる特徴があり、今後のナノスケール偏在構造の導入に大きく寄与する重要な成果であると考えられたため。
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今後の研究の推進方策 |
Cu2ZnSnS4とCu2ZnSnSe4とのナノレベルで偏在構造の作製、非占有のFe3dバンドを含む中間バンド型太陽電池の開発。バルク結晶中であれば再結合中心となると予想される表面(結果)は、ナノサイズの組成偏在構造を利用すれば、量子サイズ効果によるバンドギャップ拡大によってFe3dバンドを経由する再結合が抑制され、さらに、Fe3dバンドを介した2光子吸収による近赤外領域の長波長利用が可能になると期待される。27年度に培った技術をもとにそのような量子効果を持つ太陽電池の実現を図る。
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