研究実績の概要 |
太陽電池の超低コスト化・超高効率創エネルギーを実現するには、簡便なプロセスを用いて、既存技術による性能を大きく凌駕する革新的技術を開発することが不可欠である。本研究では、電気めっきやスプレー製膜などの非真空ケミカルプロセスによる化合物薄膜太陽電池の作製技術を用いて、水と油のように混じり合わない複数の化合物や物質を混合することで生じるスピノーダル・ナノ分解による次元性制御を積極的に利用した①電子と正孔のナノスケールでの高速分離が可能なタイプⅡの半導体ナノ構造および、②通常は透過して損失してしまう近赤外光を2光子励起により有効に利用する浮遊バンド構造を、レアメタルフリー化合物薄膜系太陽電池であるCu2ZnSn(S,Se)4(CZTS)で創成して、「作れる、使える量子効果超高効率太陽電池」を実現することを目的とする。受入研究者である池田が評価、Jiang氏が材料合成・作製を担当した。具体的には、薄膜の物性評価と太陽電池デバイスの特性解析が池田の担当、Jiang氏は薄膜及びデバイスの作製、構造の評価等を担当である。 28年度は、の一つであるCu2ZnSnS4母体相のさらなる品質向上およびスピノーダル・ナノ分解現象の実証を目指して、各種金属のポストドーピング(成膜されたCu2ZnSnS4薄膜に各種金属エンを含む溶液を塗布し、熱拡散によってドーピングすること)を試みた。薄膜品質向上やスピノーダル・ナノ分解に関して十分な根拠となる結果は得られなかったが、表面積層したIn2S3膜を使って熱処理を行った試料において、良好なpn接合(In2S3-Cu2ZnSnS4ヘテロ接合)が形成されることを見出した。これをベースしたデバイスでは、7%近い太陽エネルギー変換効率が得られた。この値は従来ヘテロ接合形成に用いられるCdSを使わなCu2ZnSnS4薄膜太陽電池では、もっとも高い効率である。
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