研究課題/領域番号 |
15F15077
|
研究機関 | 九州工業大学 |
研究代表者 |
芹川 聖一 九州工業大学, 大学院工学研究院, 教授 (60226686)
|
研究分担者 |
LU HUIMIN 九州工業大学, 大学院工学研究院, 外国人特別研究員
|
研究期間 (年度) |
2015-04-24 – 2017-03-31
|
キーワード | 深海採鉱機 / イメージング / 画像計測 |
研究実績の概要 |
深海採鉱機向けリアルタイム小型イメージングシステムの研究開発を研究課題としている。平成27年度には研究課題に関連して下記の研究を実施し、極めて良好な結果を得た。 1.深海LEDライトを用いたビデオカメラ撮影技術の検討。本研究では、検知範囲を採鉱機周辺の小規模な範囲に限定することにより、LED光源と高解像度4Kカメラを用いた観測システムを構築する。取得画像と提案する粉塵除去アルゴリズムを組み合わせることによって、光が全く届かない深海6,000mまで使用可能な装置を開発した。また、LEDを用いることで従来の照明に比べ、省電力、故障率の大幅な低減、保守作業の削減を実現した。 2.近赤外線センサ照明の検討。大気中撮影の場合には、近赤外光で写された画像は大気中の分子による散乱光がきわめて少なく、遠景までくっきりと写る。同様に、水中実験においても近赤外線の高い透過性が示されており、近赤外線センサを用いることによって深海採掘機操作時の粉麈の影響を可視光領域より抑えることが分かった。さらに、従来法を改良し赤外線用粉塵除去アルゴリズムを開発することによって、更なる画質改善を行った。以上を利用することにより、採鉱機と鉱物の高精度の距離データを計測した。 3.先行研究の画質改善システムでは、深海底の中高濃度濁度(~20mg/L)やネフェロイド層(浮遊粒子が混じっている水の層:高濁度層)での撮影画像の粉塵除去には成功しているが、更なる高濁度領域では適用できない。本研究では最も高濁度(~500mg/L)の画像からの粉麈除去法を提案し、その有効性を確認した。また、視野角を広く撮影するための口径食除去法も改良した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、先行研究で提案した画像計測技術を再検討し,高濁度水中画像の可視化技術の開発を行っている。 深海 4000 メートル以下の海底は多量のマンガン団塊や熱水鉱床がある。マンガン団塊は、銅、ニッケル、コバルトを多く含む黒色団塊状の沈殿物で、太平洋、大西洋、インド洋等広範囲に存在する。現在の深海採鉱は、採鉱母船を用いており、揚鉱システムと採掘システムを組み合わせて行われている。海底地形調査のためのセンサーシステムは、主にAUV やROVに高周波のマルチビーム音響測深機を装備し、海底に接近して航走するものである。研究開発の方向性は、分解能を上げることであり、分解能を上げた機器に適用するための開発が進められている。しかしながら、そのセンサは、深海熱水鉱床の高温の環境では使用できず、画像の解像度も良くない。また、粉塵中では使用できない。多くのコバルトリッチクラストは海山の斜面に分布し、マンガン団塊は大洋底に半埋没し、熱水鉱床は海山の頂上と斜面にある。海底鉱物コアリングを使用する場合には、急峻な崖やチムニー群の複雑な地形が多く、粉麈が舞い上がりやすい。よって、通常の深海で使用できるカメラは視界不良となり、採掘箇所で使用不可能である。 そこで、本年度の研究では、先行研究を改良しつつも新たなアイデアを取り入れて、複数小型イメージング総合観測システムを製作し、高精度で粉塵中でも採掘機の位置と鉱物の厚さと分布を検知できるシステムを開発した。また、前年度で提案したイメージングモデルにおける画質改善法を改良した。 以上により、おおむね順調に進展していると言える。
|
今後の研究の推進方策 |
当初の計画に沿って研究を推進し、平成27年度までの研究内容を一層深めつつ、さらなる実用化を図る。加えて平成28年には海中工学や電気電子工学に関する大規模な国際会議に参加し、国際的な共同研究の可能性を探る。その上で、研究成果を体系的に整理し、和文と英文の論文に取りまとめ出版する。
|