オートファジーは細胞質の一部をリソソームで分解するための進化的に保存された細胞機能である。細胞質を取り囲んだオートファゴソームとリソソームが融合することで分解が達成される。リソソームとオートファゴソームの融合にはSNAREタンパク質であるSyntaxin 17(STX17)、SNAP29、VAMP8、および繋留因子としてHOPS複合体が必要である(Jiang et al. Mol Biol Cell 2014)。STX17は完成されたオートファゴソームにのみ結合し、まだ閉鎖が終わっていない形成中間体には結合しない。また、STX17はオートファゴソームだけではなく、ミトコンドリアや小胞体にも局在する。しかし、飢餓時にはミトコンドリアや小胞体への局在は軽減し、オートファゴソームに効率よく集積する。そこで、オートファゴソームとリソソームの融合機構を明らかにする一端として、本研究では栄養飢餓依存的にSTX17が特異的にオートファゴソームへ局在できるメカニズムを明らかにすることを目指した。HeLa細胞、HEK293T細胞、マウス線維芽細胞にGFP融合したSTX17 cDNAをコードするレトロウイルス、あるいはプラスミドを用いて遺伝子導入し、ウェスタンブロット法および蛍光顕微鏡法によって解析した。オートファジーを誘導しうる飢餓によってSTX17はミトコンドリアや小胞体から離脱し、よりオートファゴソームに結合しやすくなる。そこで飢餓依存的にSTX17分子自体に変化が生じている可能性を考え、ウェスタンブロット法による解析を行った。その結果、飢餓によってGFP-STX17のバンドが一部上方にシフトすることが判明した。これは脱リン酸化酵素処理によって消失するため、STX17のリン酸化型であると考えられた。この修飾がSTX17の局在決定に関与する可能性が示唆された。
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