本年度は、収集したサンプルに基づいて分類学的研究を進め、国際学会で成果を発表するとともに、多数の論文を公表した。 まず、Ram Keshari Duwal(外国人特別研究員)が、2016年4月にカナダのOttawa Research and Development Centreに約1ヶ月間滞在し、所蔵標本の調査を行った。また、Duwalが、2016年11月に長崎市に在住の共同研究者である安永智秀博士が保管している東南アジア産の標本調査を行った。さらに、昨年と同様に、広渡(研究代表者)とDuwalが、2017年3月に沖縄県北部(国頭村)において、野外調査を実施した。以上の調査で得られた標本に基づく研究により、インド、ネパール、タイ、ベトナム、ラオス、フィリピンなどの東南アジアならびに日本と韓国を含む東アジア産のチビカスミカメムシ亜科Phylinaeの多くの未記載種を見い出すことができた。特に、アリに擬態しアブラムシ類、アザミウマ類、コナジラミ類を捕食することから害虫の天敵(有用生物資源)として利用できる可能性があるPilophorus属の未知種を多数発見できたことが特筆できる。研究成果については、2016年9月にフロリダで開催された国際昆虫学会議で発表するとともに、10本以上の論文で公表した。また、昨年に引き続き2016年10月に広渡と Duwalが熊本県立河浦高校(学振主催:サイエンスダイアローグ)で紹介した。 上記のPilophorus属については、アジア地域において当初の予想を上回る約70種(うち15種以上の新種を含む)を確認しており、他の6本の論文を併せて論文を作成中である。これら論文が公表されれば、アジア産チビカスミカメムシ亜科Phylinaeの種多様性の解明とともに、生物的防除資材としての応用研究に貢献すると考える。
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