研究課題
平成27年度では、バナメイエビの眼柄および卵巣に存在するペプチドである赤色色素凝集ホルモン(red pigment concentrating hormone: RPCH)の構造決定に成功し、卵成熟への促進作用を立証した。平成28年度は、RPCHの作用メカニズムを解明するため、眼柄の上位にある脳や胸部神経節に注目し、それらの組織に存在するセロトニンをエビに注射投与しところ、卵巣におけるRPCH遺伝子発現量が上昇した。この結果、セロトニンがRPCH遺伝子レ発現ベルを制御し、最終的にエビの卵成熟を促進する役割を持つことが示唆された。また、甲殻類の幼若ホルモン類似物質(methyl farnesoate: MF)と脱皮ホルモンであるエクジステロイドと組み合わせた形でバナメイエビに注射投与し、卵成熟への促進作用を評価した。フェローの滞在期間は平成29年6月30日までとなっており、現在も分析中であるが、既に現時点において、MFは単独でもエクジステロイドと組み合わせた形でも卵黄タンパク質の遺伝子発現を上昇させないデータを得ている。この結果、MFよりも上述のRPCHがこれまで未解明であった卵黄形成促進因子の役割を持つ可能性が高いと考えられる。最後に、エビ類の卵黄形成促進メカニズムを解明するため、二次伝達物質の関与を取り上げた。ザリガニでは、卵成熟に伴い、protein kinase C(PKC)が細胞膜に移動し、活性化される報告がある。そこで、バナメイエビエビおよびオニテナガエビを用い、細胞膜およびサイトゾルにおけるPKCの有無を検出する免疫学的手法を確立した。現在、各生殖段階における含量と分布を調べているところであるが、バナメイエビでは、生殖過程の後期にPKCの含量は全体的に高い状況にあることが判明した。以上の研究によりエビ類の成熟促進因子に関する新しい知見を得ることができた。
28年度が最終年度であるため、記入しない。
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General and Comparative Endocrinology
巻: 246 ページ: 301-308
http://dx.doi.org/10.1016/j.ygcen.2017.01.006