研究実績の概要 |
エルゴステロールの代謝物として単離されたergosta-4,6,8(14),22-tetraen-3-oneの有機合成を試み、二段階のステップで合成に成功した。本化合物をリグニン分解誘導試験に供した結果、エルゴステロールと同等の活性が認められた。つまり、複数種のステロイド類がリグニン分解を誘導している可能性が考えられた。 これらステロイド類とリグニン分解の関係を調査すべく、リグニン分解時及び非分解時におけるRNA-Seq解析を行った。ブナ木粉あるいはブナホロセルロースに高活性リグニン分解菌を接種し、所定期間培養後RNAを抽出し、MiSeq解析に供した。その結果、リグニン分解時に特異的に発現している遺伝子の約9割は機能未知であったが、機能が特定出来たタンパク質のうち、特にトランスポーター系タンパク質遺伝子の発現が顕著であった。なお、ステロイド類の生合成に関与する遺伝子の特異的発現は認められなかった。つまり、リグニン分解を誘導するステロイド類は、リグニン分解時に特異的に産生されているのではなく、リグニン分解時に生成する過酸化水素等の活性酸素種により白色腐朽菌細胞膜が一部破壊され、これにより派生するステロイド類がリグニン分解の誘導に関与していることが推測された。
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