研究課題
拡張型心筋症 (DCM) は難治性疾患に指定されおり、これまで、ヒトDCMの特徴を有する適切な動物モデルがなかったため、DCMの病態解明と新たな治療法の開発は遅れていた。研究代表者らが作製した心筋トロポニンT ΔK210欠失突然変異によるDCMノックイン (KI) マウスモデルは心収縮能の低下、心拡大、突然死の頻発など、ヒトDCMの特徴をよく再現しており、治療薬評価モデルとして有用である。今までの研究において、このDCM KIマウスの心臓迷走神経活動は低下していることが間接的に示唆されたが、DCM KIマウスの心臓迷走神経活動が障害されているという直接的な証拠はなかった。また、その障害の中枢機構も明らかではなかった。本研究は、ΔK210 DCM KIマウスモデルを用いて、DCMの心臓迷走神経調節機構の詳細を解明し、致死的な心臓リモデリングを伴うDCMをはじめとする心疾患に対する有効な治療薬の開発を目指す。平成27年度に、独自に開発したマウス心臓microdialysis法をDCMマウスモデルに応用して、DCMの心臓迷走神経調節機構の解明を行った。Baselineの心筋透析液を採取し、DCMと野生型 (WT) マウスの心筋透析液アセチルコリン(ACh)濃度を比較してみたところ、DCMマウスの心筋透析液ACh濃度が低く、DCMの心臓迷走神経活動が低下していることが分かった。心臓迷走神経電気刺激に対する応答については、DCMとWT間で有意差はなかった。しかし、中枢性α2アドレナリン受容体を介した心臓ACh放出機構(我々の研究で存在が証明されている)については、DCMの方が機能低下していた。以上より、DCMでは、心臓迷走神経自体の機能異常はないが、心臓迷走神経機能を調節する中枢機構の障害で心臓ACh放出が低下していることが明らかとなった。
2: おおむね順調に進展している
申請書の27年度の研究計画はDCMの心臓迷走神経調節機構を解明することであり、予定通りに、DCMの心臓迷走神経の末梢及びα2アドレナリン受容体を介した中枢調節機構を明らかにしたから、本年度における研究目的の達成度としては概ね順調であると考えられる。
申請書記載した通り、28年度はDCMに対する有効な治療薬の開発を行う予定である。DCM KIマウスに対するグレリンの長期治療効果の検証、およびDCM KIマウスに対するグレリンの中枢を介した突然死と心臓リモデリング抑制機構の解明をやっていく。
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Cardiovascular Diabetology
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