本研究は、ミャンマー経済において、グローバル・バリュー・チェイン(製造活動におけるサプライチェーンの国を超えた展開)が形成された場合の経済的な効果について、マクロ経済分析、産業セクター分析を含む総合的な視点から分析して、併せて政策提言を行うことを目的としている。平成29年度においては、Ni Lar特別研究員によるミャンマーでの現地調査等を通じて、上記の分析に必要なデータ・文献の収集・整理を行った。この結果として、主として以下の研究成果をあげることができた。 一つは、グローバル・バリュー・チェインの形成要因に関する分析である。これまで、生産工程の分散化を説明するフラグメンテーション理論の適合性についてミャンマーを含む東アジアを対象に研究を行い、その成果を査読付英文雑誌に掲載してきたところであるが、本年度はその成果を現地調査によって確認・フォローアップ作業を実施した。 二つは、ミャンマーを含む資源国における資源開発が、グローバル・バリュー・チェインの核となる製造業の発展を妨げているか否か(いわゆる「資源の呪い」仮説の適合性)についての分析である。これまで、ミャンマーを含むアジア諸国では、「資源の呪い」仮説が適合せず、むしろ資本を蓄積する効果があることを検証し、その成果を査読付英文雑誌に掲載してきたところであるが、本年度はその成果について国際学会で発表し意見交換を行った。 三つは、ミャンマーを含むメコン諸国における移民からの海外送金収入の受入れ効果に関する分析である。本年度は、海外送金収入が生産ネットワークの核となる製造業の発展を妨げるリスク(いわゆるオランダ病)の存在を確認するとともに、海外送金収入が生産能力を高めるための政策提言を行い、その成果を査読付英文雑誌に掲載するとともに、国際学会等において発表を行った。
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