研究課題/領域番号 |
15F15313
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
松田 一成 京都大学, エネルギー理工学研究所, 教授 (40311435)
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研究分担者 |
TAN DEZHI 京都大学, エネルギー理工学研究所, 外国人特別研究員
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研究期間 (年度) |
2015-11-09 – 2018-03-31
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キーワード | 原子層物質 / 光学的性質 / 太陽電池 / 光検出器 |
研究実績の概要 |
近年、わずか原子数層の極限的な薄さを有する新たな物質系である原子層物質科学の研究が急速に進展している。本研究では、遷移金属ダイカルコゲナイドのみならず、グラフェン、フォスフォレン、金属モノカルコゲナイドなどの幅広い原子層物質を対象に、原子層物質を自在に組み合わせた原子層人工ヘテロ構造を作製し、その光科学の研究を進める。さらに、新たな原子層ヘテロ構造における特異な光学的性質を明らかにするとともに、光検出器、発光素子、太陽電池応用などの研究を展開することを目的とし研究を進めた。 最初のステップとして、原子層人工ヘテロ構造を構成する遷移金属ダイカルコゲナイド、金属モノカルコゲナイドを中心に、その基礎的な光学的性質を調べた。特に光検出器や太陽電池応用で高いポテンシャルが期待されるが、これまでほとんどその光学的特性が明らかとなっていなかった金属モノカルコゲナイド(MX=Ge, Sn, X=S, Se)の中で、GeSをモデルシステムとして研究を展開した。その結果、間接遷移と直接遷移がエネルギー的に近く、可視光域付近に光学バンド端を有する層状半導体であることが明らかとなり、実際に光検出器・太陽電池デバイスなどへの応用に非常に高いポテンシャルを有する系であることがわかった。さらに、デバイス構造作製の研究へと発展させるために基礎となる微細加工(電子線リソグラフィ)技術の条件最適化を進め、デバイス作製に向けた準備が整った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、原子層人工ヘテロ構造を構成する遷移金属ダイカルコゲナイド、金属モノカルコゲナイドを中心に、その光学的な性質を調べた。特に、これまでほとんどその光学的特性が明らかとなっていなかった金属モノカルコゲナイドGeSをモデルシステムとして研究を展開した。その結果、バルクGeSは間接遷移と直接遷移がエネルギー的に近く、また1.7eV付近にバンド端を有する層状半導体であることが明らかとなり、光検出器・太陽電池デバイスなどへの応用に、非常に有用な系であることがわかった。さらに、次年度以降、太陽電池などのデバイス構造作製の研究へと発展させるために、その基礎となる電子線リソグラフィを原子層人工ヘテロ構造に適用するための条件の最適化を進め、デバイス作製の準備が整ってきたため。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、研究計画の初年度であることから、主に原子層人工ヘテロ構造の基礎となる光学特性の理解とデバイス応用のための電子線リソグラフィ技術の最適化を行った。両研究ともに順調に研究が進展しており、異種の遷移金属ダイカルコゲナイドや、それらと金属モノカルコゲナイドから構成される原子層人工ヘテロ構造の作製を進める。さらに電子線リソグラフィ技術を利用して、遷移金属ダイカルコゲナイドや金属モノカルコゲナイドの光検出器などのデバイス応用の研究を進める予定である。
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