研究課題/領域番号 |
15F15314
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
青木 伸之 千葉大学, 融合科学研究科(研究院), 准教授 (60312930)
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研究分担者 |
CHUANG CHIASHAIN 千葉大学, 融合科学研究科(研究院), 外国人特別研究員
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研究期間 (年度) |
2015-11-09 – 2018-03-31
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キーワード | グラフェン / 走査ゲート顕微法 / バリスティック伝導 / 磁気伝導度ゆらぎ / 窒化ホウ素 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,窒化ホウ素(BN)によって実現される高移動度グラフェン(Gr)におけるバリスティック伝導領域での電子波ダイナミクスに関する研究を行うことにある。初年度は,グラフェンにおけるバリスティック伝導を観測するための素子作製から研究を開始した。研究室に既存の3次元マニピュレーターを使用して,ドライトランスファー技術を用いてBN/Gr/BN構造の作製を進めた。単層グラフェンを用いたBN/Gr/BN構造を作製し,その素子の低温での4端子移動度を評価し,磁気伝導特性の観測を行った。目標値としていた500,000 cm2/Vsには届かなかったが,100,000 cm2/Vsを越えるの移動度を低温で観測するに至り,系の平均自由行程は400 nmを超える値となってきた。また,これまで共同で研究を行ってきた走査ゲート顕微法(SGM)によるCVDグラフェンの観察結果に関して解析を行い,共著論文の作成を行った。本研究を開始してから昨年度中に,3報の論文が学術雑誌にアクセプトされ,さらに1報の論文が現在査読中である。また,3月には日本物理学会で研究成果に関する講演を行うなど,成果発表を行ってきた。現在,6月以降に行われる国際会議にも3件応募しており,それに向けた実験データの収集を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
・当該研究室の学生と協力して,PPC/PDMSを利用したグラフェン(Gr)とBN箔のドライトランスファー技術を習得してきており,これにより任意の積層構造の作製が可能となってきたため。 ・液体ヘリウムを用いた低温クライオスタットの使用方法を習得し,これまではすべて他人任せであった試料の取り付けや測定のセッティングが単独でできるようになってきたため。 ・フォトリソグラフィ技術を習得し,Gr/BN試料に対して多端子電極の取り付けが可能となった。これにより試料のホール測定も可能となってきたため。 ・Si基板上に作製した,BN/Gr/BN積層構造の移動度は現時点で110,000cm2/Vsが得られており,順調に高移動度化が進んでいると考えられるため。
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今後の研究の推進方策 |
これまで研究者が専門的で行ってきたCVDグラフェン試料のSGM観察を用いた伝導特性評価の研究をさらに進めるとともに,高移動度BN/Gr/BN試料におけるバリスティック領域でのSGM観察へとシフトしていくことを予定している。これにより期待する量子構造の一つが開放系量子ドットであり,単一ドットにおける電子は分布の様子をSGM観察することから開始し,結合量子ドットネットワークに拡張した研究を進め,スイッチングデバイスや量子演算素子を見据え,次世代の電子波デバイスへの応用をめざす。
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