研究実績の概要 |
ノイズと決定論的力学の相互作用に伴う雑音誘起現象は非線形物理学では古くから研究されてきた問題です。雑音誘起現象とは、決定論力学系の自然測度が微小ノイズにより大幅に変化し、決定論極限で観測されなかった非線形現象がノイズ存在下で観測されるようになる現象です。よく知られた雑音誘起現象である確率共鳴、ノイズ同期、雑音誘起カオスは、いずれも緩急のついた運動を引き起こす不変多様体や、カオティックサドルといった不変集合と外部ノイズとの相互作用により生じます。とくに決定論的動力学がカオス的、あるいは潜在的にカオス的である場合、非自明な確率分岐現象が生じることが知られています。本研究の目的は非線形ランダム力学系の数値解析法を開発するとともに、ランダムlogistic写像、確率Lorenz系における確率分岐構造を解析し、確率カオスの現象論を構築することにあります。本年度は特にランダムlogistic写像における確率分岐、および確率位相方程式におけるノイズ同期現象を研究しました。本研究費(繰り越し分)に基づいて、2017年4月24日-28日に京都大学において、国際研究会Kyoto Dynamics Days: Random Dynamical Systems Theory and Its Applicationsを主催し、佐藤譲とThai Son Doanが参加講演しました。Jeroen Lamb, Martin Rasmussen, Maxi Angel (Imperial College London)、Ale Jan Homburg(University of Amsterdam)らを招聘し、ランダム力学系に関する総合的な共同研究を開始しました。
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