研究課題/領域番号 |
15F15338
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
君塚 信夫 九州大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (90186304)
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研究分担者 |
GUPTA RAKESH 九州大学, 工学(系)研究科(研究院), 外国人特別研究員
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研究期間 (年度) |
2015-11-09 – 2018-03-31
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キーワード | フォトンアップコンバージョン / 多孔性金属錯体 / 光物性 / ホスト―ゲスト |
研究実績の概要 |
本研究は、非常に低強度の励起光で高効率なフォトン・アップコンバージョンを達成することを目的としている。本年度は、可視光を紫外光に変換するための新規な材料合成とその評価を行った。紫外光に発光を持つ配位子を用いて多孔性錯体骨格を構築した。その錯体骨格を合成する際に可視光を吸収する三重項増感剤を共存させることで、錯体骨格中に三重項増感剤を導入することができた。得られた複合体に可視光を励起したところ、紫外域にアップコンバージョン発光を観測した。このアップコンバージョン発光は太陽光程度の非常に弱い励起光強度から比較的高い効率を示すことが分かった。すなわち、世界で初めて、太陽光程度の非常に弱い光強度において、可視光から紫外光へのアップコンバージョン効率を最大化することに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
紫外域に蛍光を示すターフェニルジカルボン酸を合成し、これを配位子として亜鉛イオンと錯形成することにより、紫外光発光を示す多孔性金属錯体の合成に成功した。この錯体の合成時に三重項増感剤であるイリジウム錯体を共存させることで、多孔性金属錯体の細孔中にイリジウム錯体を取り込ませることができた。得られた複合体を緑色のレーザー光で励起したところ、紫外域にアップコンバージョン発光を示すことが分かった。このアップコンバージョン発光の励起光強度依存性を検討したところ、太陽光程度の数mW/cm2の光強度からアップコンバージョン量子収率が最大化されていることが分かった。以上により、当該研究は順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
ドナー分子であるイリジウム錯体にカルボン酸を修飾し、それを骨格中に埋め込むという新しい戦略により、三重項の増感効率を向上させ、最大化された量子収率を更に向上させることを試みる。また、得られた知見を近赤外から可視光へのアップコンバージョンに一般化することで、低強度からアップコンバージョン量子収率を最大化するための材料設計・合成を進める。得られた一連の複合体を酸素バリア能を有するポリマー中に分散し、空気中で機能するフィルム材料を創出することも試みる予定である。
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