二次電池や電気二重層キャパシタにおいては、イオン等の物質の貯蔵と輸送(移動)がキー過程になる。イオンの貯蔵にはイオンのサイズに近い小さな細孔ほど高容量を与えるが、高パワー密度(瞬発力)を得るには、短時間での充・放電に伴うイオンの迅速な輸送が不可欠になるため、より大きな通路(細孔)が必要である。このように貯蔵と輸送ではそれぞれ異なる最適な空間(サイズ、構造や機能)を必要とするが、物質貯蔵と輸送の双方に適したミクロ・メソ空間を兼ね備えた材料の合成は困難であった。貯蔵と輸送の両過程の効率を同時に最大化できる階層的ミクロ・メソ空間の構築法の確立は高効率エネルギー貯蔵の実現に重要な課題である。本研究では、超分子有機構造体を前駆体として用いて炭素化処理を行うことにより、構造と機能が精密に制御された多孔質炭素材料を創成し、二次電池やキャパシタ等における貯蔵と輸送の能力・効率の最大化を目的とする。超分子有機構造体前駆体と酸化グラフェンとの複合体の合成を行い、さらに、その複合体を不活性雰囲気下で高温で熱処理し、窒素ドープした多孔質グラフェン炭素材料を合成した。有機構造体前駆体と酸化グラフェンとの複合体及び窒素ドープ多孔質グラフェン炭素材料のキャラクタリゼーションを行い、細孔構造や窒素含有量など構造と特性を明らかにした。窒素ドープ多孔質酸化グラフェンのキャパシタの電極材料としての性能評価を行い、得られた炭素材料の多孔性構造、グラフェンの導電性及び表面にドープされた窒素(N)成分の効果によって、本材料は、優れた比電気容量及びサイクル特性を有することを明らかにした。
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