平成29年の主な実績はふたつあった。(1)上丘シミュレーションの現実化(細胞ひとつひとつのパラメター計測)と(2)ニューロ補綴の実践に必要なモデルの確認だった。 (実績1)上丘シミュレーションに関しては、今まで計測していたのは、回路(システム)のパラメターだった。一方、今回はニューロン一つ一つのパラメターを計測してみた。スウェーデンの共同研究をしている Kardamakis 博士からヤツメウナギの細胞のデータを譲り受け、以前使用していた進化アルゴリズム・マルコフ連鎖モンテカルロ(DE-MCMC)で Hodgkin-Huxley モデルのパラメターを計測した。その結果、ヤツメウナギの実際の細胞と同じ行動を達するモデルを作ることができた。この手法をもって、マウスの上丘のシミュレーションのニューロンのパラメターも計測した。(実績2)視覚注意のニューロ補綴は、上丘を電極で制御する研究である。電気刺激によってもたらされる神経活動のモデルは(実績1)になる。一方、ある神経活動をもたらしたいときに必要な電気刺激の計算は、(実績2)になる。そのいわゆる逆モデルを quantized Kernel Least Mean Squares(qKLMS)をもって学習させた。結果に50ms間隔で上丘シミュレーションの神経活動を、精密的に再現できた。平均は0.92、最低の相関数値は0.81だった。
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