研究課題/領域番号 |
15F15396
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研究機関 | 琉球大学 |
研究代表者 |
屋 宏典 琉球大学, 熱帯生物圏研究センター, 教授 (10177165)
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研究分担者 |
HASANUZZAMAN MIRZA 琉球大学, 熱帯生物圏研究センター, 外国人特別研究員
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研究期間 (年度) |
2015-11-09 – 2018-03-31
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キーワード | マングローブ / 耐塩性 / NO / シグナリング |
研究実績の概要 |
本研究ではマングローブ植物におけるシグナリング分子としての一酸化窒素(NO)を新たな標的として、マングローブの塩耐性機構を統合的に解明することを目的とする。平成28年度は27年度に設定したNO供与体(SNP)及びNO合成阻害剤の実験条件下で、メヒルギの耐塩性の評価を行った。メヒルギを3%塩濃度で処理すると、根の成長が阻害されるが、この阻害はNO供与体により軽減された。一方、NO合成阻害剤はNO供与体の効果を打ち消す作用があった。塩ストレスは光合成能を低下させ、酸化ストレスを増大させた。NO供与体はこれらの阻害を顕著に改善することはなかったが、NO合成阻害剤はNO供与体の効果を相殺する作用が明らかであった。このことから、マングローブにおいてNOは光合成に対する塩の毒性を軽減し、塩ストレス耐性に寄与していると判断された。 また、オヒルギの耐塩性に及ぼすNOとH2Sの影響を評価した。NOとH2S供与はオヒルギの耐塩性に大きな影響は及ぼさなかったが、NO及びH2S合成の阻害剤はオヒルギの耐塩性を著しく低下させた。このことはNO及びH2Sがマングローブの耐塩性に寄与していることを示していると判断した。これらの成果はPlant 4th International Symposium on Plant Signalling and Behavior 2016 St. Petersburg, Russia、 Plant Nutrition, Growth & Environment Interactions II and Pant Molecular Physiology Conference, Vienna, Austriaにおいて発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
メヒルギのNO濃度の計測方法の確立とNO供与体の処理条件の設定及びその他のパラメーターの測定方法を確立し、マングローブの塩ストレス耐性におけるNOシグナリングの関与の可能性を探るための初段階の実験を終了した。当初の計画にはなかったが、H2Sの塩ストレス軽減効果も見出すことに成功しており、今後はこれらの相互作用についても追及する予定である。よって、進捗状況は概ね順調と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
29年度は28年度に見出したマングローブにおけるNOとH2Sの耐塩機能の相互作用について検討を行う。オヒルギに塩ストレスを負荷した際のNOとH2Sの相互作用及び抗酸化酵素の相関を含めて解析し、マングローブの耐塩機構における両者の役割を探る。また、マングローブの耐塩機構におけるNOによる抗酸化酵素群の発現制御及びイオン恒常性の調節について検討する。7月にはこれらの成果をSEB Annual Main Meeting, Gothenburg, Swedenで発表するとともに、最終年度であることから論文としての取りまとめを行う。
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