研究課題/領域番号 |
15F15397
|
研究機関 | 東京海洋大学 |
研究代表者 |
竹内 裕 東京海洋大学, その他部局等, 准教授 (70418680)
|
研究分担者 |
XU DONGDONG 東京海洋大学, その他部局等, 外国人特別研究員
|
研究期間 (年度) |
2015-11-09 – 2018-03-31
|
キーワード | 種間交雑魚 / ニベ科魚類 / 生殖細胞欠損 / 始原生殖細胞 / トランスクリプト―ム解析 / 精原細胞移植 / 代理親魚技術 |
研究実績の概要 |
ニベ科魚類の種間交雑により、ニベの卵とシログチの精子をかけあわせたニベ×シログチ雑種(雑種)は矮小化した生殖腺を持ち、さらにこの矮小化生殖腺は生殖細胞を欠損していることが明らかとなっている。また、本雑種1か月齢の生殖腺原基では始原生殖細胞が確認されるものの増殖していないことが判明している。本研究では、RNA-Seq法を用いて、ニベおよび雑種の1か月齢の生殖腺原基で発現する遺伝子群の比較を行うことで、不妊化生殖腺での遺伝子発現パターンの解明、および、雑種始原生殖細胞の増殖不全に関与する遺伝子群の選定を目指した。 ニベからは成熟卵巣(19ヵ月齢)・未熟卵巣(3ヵ月齢)・未熟精巣(3ヵ月齢)・生殖腺原基(30日齢)の4サンプルを、シログチからは成熟卵巣(24ヵ月齢)の1サンプルを、雑種では不妊化生殖腺(3ヵ月齢)・生殖腺原基(30日齢および26日齢)の3サンプルをそれぞれRNAサンプルとして用いた。生殖腺原基は約100個体分をプールした。また、生殖腺原基の組織切片を作成し生殖細胞数の計数を行ったところ、ニベでは1個体あたり約200個の始原生殖細胞が観察されたのに対し、雑種では1個体あたり約20個とニベの1/10程度となった。 各サンプルのシーケンスを行ったところ、各レーンからそれぞれ約1億2千万リードが得られた。このうち、ニベ、シログチで得られたリードを用いてアセンブリを行い、リファレンスを作成した。今回作成したニベのリファレンスは4種類の発達ステージの生殖腺で構成されており、多様な発達段階の生殖腺で発現している遺伝子が含まれていると考えられるため、本研究では、このニベのリファレンスを以降の解析に用いた。得られたデータを用いて1)Blast検索2)相同性検索3)クラスタリング解析を実施し、ニベおよび雑種間で発現量に差のある遺伝子を特定した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
個々の遺伝子発現について比較を行った結果、雑種不妊化生殖腺で特異的に発現している遺伝子が38個、ニベ未熟精巣・卵巣で特異的に発現している遺伝子が705個選定された。既知の生殖細胞マーカー遺伝子であるvasa遺伝子とnanos2遺伝子については、どちらもニベ未熟精巣および卵巣に特異的に発現している遺伝子として分類され、本トランスクリプト―ム解析結果が雑種3か月齢生殖腺は生殖細胞を欠損するという表現型と一致することが示された。さらに、ニベと雑種での生殖腺原基(1か月齢)で発現量に差のある遺伝子を探索したところ、雑種あるいはニベ特異的に発現する遺伝子が22個および126個、両者で発現しており発現量に差のある遺伝子が359個、すなわち、雑種の始原生殖細胞での増殖不全に関与していると考えられる候補遺伝子を合計509個を選定した。
|
今後の研究の推進方策 |
①平成27年度に実施したRNAシークエンスにより、受精後1か月齢のニベおよびニベ×シログチ雑種の未分化生殖腺でそれぞれ特異的に発現する遺伝子および両サンプル間での発現量が優位に異なる遺伝子を合計で509遺伝子発見しカタログ化した。これらの候補遺伝子について、特に発現量の大きい焼く20個の遺伝子について、in situハイブリダイゼーション法により、雑種あるいはニベの始原生殖細胞で発現しているか否かを調査する。同時に、GENE ONTOLOGY解析によって、これらの発現遺伝子を機能別に分類し、ニベと雑種の両始原生殖細胞間でどのような機能の遺伝子の発現量に差が生じているかを調査する。②ニベおよび雑種の染色体標本の観察から、雑種化による染色体の欠落・部分欠損が生じているか否かを調査する。また、中国産ニベ科魚類用いて新たなニベ科雑種を作出し、得られたF1世代仔稚魚の生残性および不稔性を調査する。③ニベ×シログチ雑種の性分化過程においてエストロジェンを投与することで卵巣の分化を誘発し、雌型(卵巣型)不稔化生殖腺を持つ宿主個体を作出する。
|