研究課題/領域番号 |
15F15399
|
研究機関 | 国立研究開発法人水産研究・教育機構 |
研究代表者 |
長井 敏 国立研究開発法人水産研究・教育機構, 中央水産研究所, グループ長 (80371962)
|
研究分担者 |
CHEN HUNG-YEN 国立研究開発法人水産研究・教育機構, 中央水産研究所, 外国人特別研究員
|
研究期間 (年度) |
2015-11-09 – 2018-03-31
|
キーワード | メタゲノム解析 / 真核生物 / プランクトン / 石垣島 / 石西礁湖 / 生物多様性 / OTUs |
研究実績の概要 |
2015年6月に、沖縄県石垣島および石西礁湖周辺海域の19定点において、サンゴ礁保全に向けた取り組みのために、精密環境調査を行った。その一環として、当該海域におけるプランクトン生物多様性の把握のため、18S-rRNA遺伝子の一部の領域を用いた次世代シーケンシングによるメタゲノム解析を実施した。今回は、1μmより小型の真核生物、特に微細藻類(ピコ真核)の出現・分布の状況を把握するため、>1μmと0.2-1μmの2つの画分から検出された真核生物について、比較してみた。>1μmおよび0.2-1μmの画分から、それぞれ583、508 OTUs(Operational Taxzonomic Units)が検出された。このうち、>1μmおよび0.2-1μmのみから検出されたのは、それぞれ237、162 OTUs、0.2-1μm両方の画分から検出されたのは、346 OTUsであり、フィルターのポアサイズにより、異なる生物群が検出された。このうち、0.2-1μmのみから検出されたピコ真核生物は、5 OTUs検出された。残りの157 OTUsは、細胞サイズが1μmより、はるかに大きな渦鞭毛藻、珪藻、繊毛虫、あるいは動物プランクトンであり、この結果は、多くの種類の溶存DNAが未分解のまま海水中に浮遊しており、1μmのフィルターでは補足できないが、0.2μmのフィルターでは補足されたことを示すものである。また、2つのフィルター画分から検出された生物群を、広島湾など富栄養化した沿岸域のサンプルのそれと比較した結果、石垣島・石西礁湖周辺海域の真核生物の多様性とその組成は、それと大きく変わらず、渦鞭毛藻、繊毛虫、珪藻、動物プランクトン(カイアシ類)が優占する海であることを明らかにすることが出来た。水平分布を見ると、石垣島南部から石西礁湖南東部、石垣島北部と西表島北部、ヨナラ水道付近における生物多様性が類似しており、富栄養化や海流の影響が見られることが判明した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
農林水産技術会議委託プロジェクト研究「海洋微生物解析による沿岸漁業被害の予測・抑制技術の開発」、環境研究総合推進費「島嶼-サンゴ礁-外洋統合ネットワーク系動態解明に基づく石西礁湖自然再生への貢献」で得られたメタゲノム解析データにおいて、複数の統計パラメータを用いて解析を進めており、順次、論文化する作業を行った。加えて、公的核酸データベース等のデータベースから遺伝子配列の情報と、その配列を取得した地域の情報を収集し、種の分布と緯度経度(気候)の関係を解析するため、緑藻、海藻、渦鞭毛藻、サンゴについて解析を進めた。現在、複数の論文を投稿、海底中であり、以上から、おおむね順調に進展していると判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
2015年6月に、沖縄県石垣島および石西礁湖周辺海域の19定点において、精密環境調査を行った。当該海域におけるプランクトン生物多様性の把握のため、18S-rRNA遺伝子の一部の領域を用いた次世代シーケンシングによるメタゲノム解析を実施した。1μmより小型の真核生物、特に微細藻類(ピコ真核)の出現・分布の状況を把握するため、>1μmと0.2-1μmの2つの画分から検出された真核生物についての比較に関する論文を完成し、現在、共著者間で修正を行っており、これを投稿する予定である。また、これまで投稿した論文(海藻、サンゴ)が受理されるように努力する予定である。
|