研究課題/領域番号 |
15F15400
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
高橋 昌志 北海道大学, 農学研究院, 教授 (10343964)
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研究分担者 |
BALBOULA AHMED 北海道大学, 農学研究院, 外国人特別研究員
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研究期間 (年度) |
2015-11-09 – 2018-03-31
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キーワード | ガラス化 / 卵子 / カテプシン / アポトーシス / 染色体分離 |
研究実績の概要 |
本年度は、ガラス化保存処理後の卵母細胞への影響を解析するために、1)減数分裂に深く関わる紡錘体形成チェックポイントに及ぼすガラス化処理の影響とカテプシンの関与、2)二本鎖DNA損傷に及ぼすガラス化処理の影響および、損傷防除に果たすオートファジー機構の役割、並びに3)胚発生と品質に果たすカテプシンKの役割および、その活性阻害による発生率向上について解析を行った。 1)ガラス化によってマウス卵子の成熟培養後、MII染色体分離異常の率が増加したが、その増加は、動原体を認識するチェックポイントの構成因子のひとつであるMad2が散在的に検出され、その働きが不十分になっていることが示唆された。cathepsinBの活性を阻害するとガラス化処理後のMad2の偏在が正常化された。このことから、ガラス化処理によって撹乱された染色体分離機構は、細胞内でのリソソームシステインプロテアーゼを活性化し、その酵素による影響を受けたことが一因と推察された。しかし、cathepsinBの活性阻害材を活用することで、機能の回復の可能性が示唆された。2)マウス卵子へのガラス化処理によって核内二本鎖DNAの損傷が増加したが、合わせてオートファジー活性の増加がLC3IIおよびATGタンパクの増加と共に観察された。DNA損傷はラパマイシンによるオートファジー阻害によって低減した。3)我々が既に明らかにしたウシ卵子、胚においてカテプシンBの活性と品質との逆相関と同様に、カテプシンKも低品質卵子、胚でその活性が増加し、その阻害剤であるOdanactibの添加によって胚盤胞発生率および細胞数が有意に増加した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画通り、ガラス化による卵子への影響が細胞質内カテプシンの活性化を起こし、それが原因である卵子成熟中の染色体分離異常を引き起こすことが示された。さらに、カテプシン阻害剤の添加によって撹乱された染色体分離機構の回復が認められた。また、興味深いことにオートファジーの制御によってもガラス化によって受ける障害からの回復が期待される。 このことは、今後、哺乳動未成熟物卵子のガラス化による障害を比較的簡易に防除できる培養法の確立につながることが期待される。
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今後の研究の推進方策 |
本年度で二年間の研究期間は終了することになるが、新たに得られた研究知見をさらに深化することで家畜のみならずヒトの生殖に関わる卵子生存性向上への展開を予定している。
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